3月2日


電車でのこと。

肩掴んで列並んでんだから横入りするな
と言われる。
そのとき黙ってその人を目で追っかけることしか出来なかった。
言い返してやりたい。こちらの理由を伝えたい。大衆の前で言われて俺らが悪者のように思われている気がする。お前の勘違いなのだと言い負かしたい。ごめんなさいと言わせたい。みぞうち辺りが硬く重くなっているのを感じる。ふつふつと怒りが込み上げる。

何故怒りの感情が湧くのだろう。
ふと思った。
こちらに非はない。もしくは悪気はない。だからそのことをありのまま伝えるだけでいいはずだ。ゆるりとお茶を飲み交わすように、知り合いに言うように何故伝えられないのか。敵ではないはずだ。こちらが悪者に見える、言い負かしたいなどと、思うよりも前に何かかおかしい気がした。そのおかしさが私の身体の中ではっきりと起きている。
電車が駅に止まる。満員の車内から人が流れ出ていく。その際押されるように端へ追いやられる人もいる。肩がぶつかる人もいる。なのにみんな何も言わない。
文句を言えというわけではない。ただ、気持ちを素直に表明出来ないこの事態が、そういえば奇妙な気がした。
というか、辛い。
この空間から抜け出したくはないのかな。僕はすぐさま抜け出したい。そうでなくても、僕に肩を掴んで伝えたおっちゃんに、ゆるりと落ち着いて話かけられる状態にまではもって行きたいな。

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