“成り上がり”物語を自らに注入するミン・ユンギ。夢と破滅の戒め。「Tony Montana」|Agust D(2016年)
忘れもしない、2021年3月12日(金曜日)。
その日。
突然「BTS」の沼に落ちた新規ARMYです。
そして、クリエーターとして信用できるところ…創作者/表現者としてのミン・ユンギ|MinYoongiを推すタイプのユンギペンです。
どこか不完全で、つねに焦りを抱えていて、誰よりも、次はもっとうまくやってやろうと目を凝らして世の中を見ている。
“天才”のように言われるが、すべてが不安、準備、先回り。
周りの期待を慎重に汲み、つねに少しだけ期待を超えて相手を安心させる。
それが私のミン・ユンギです。
ラップスターになる
BTS(防弾少年団)のデビューにあたって、育ての親(当時は事務所の社長でありプロデューサー)のパン・シヒョクは、「より本質的でなければならない」と、10代の彼らにHipHopの成り立ちや代表的な楽曲の解釈を勉強する時間を設けたそうです。
また、彼らはアメリカへ武者修行にも出かけています(実際はカメラを入れてリアリティショウのコンテンツ=「防弾少年団のアメリカンハッスルライフ(2014年|Mnet)」)。
もともとHipHopに心酔していたキム・ナムジュンとミン・ユンギは、それまでにも相当量の楽曲を聞き込んだり、あこがれのラップスタイルをまねたりしていたことでしょう。
「HipHop Lover/ヒップホップ性愛者(힙합성애자)」という楽曲があるくらいです(アルバム「DARK&WILD(2014年8月)」。
ギャングスタ・ラッパーにとっての教科書映画「スカーフェイス」
アルパチーノ主演の映画「スカーフェイス|Scarface(1983年)」は、キューバからの移民がアメリカでヒットマンからドラッグビジネスで成り上がる「トニー・モンタナ(アルパチーノ)」の物語。
カルト的な人気があり、ギャングのライフ・スタイルのバイブルとなっている作品なんだそう。
特に、西海岸のギャングスタ・ラップ界隈では「トニー・モンタナ」は象徴的な存在で、ラップのモチーフとしてよく歌われていたそうです。
The world is yours(世界はおまえのもの)
映画「スカーフェイス」の中で、「トニー・モンタナ」がのし上がっていく過程で目にするスローガン「The world is yours」。
この言葉により、「トニー・モンタナ」は無敵感、全能感を肥大させていく…仲間や家族を失い、やがて自らが破滅するまで。
「トニー・モンタナ」という、ラッパー界ではあまりにも知られた象徴= “HipHop”の型(フォーマット)をミン・ユンギは自分の中に注入するかのように歌う。
しかし、アルパチーノの「トニー・モンタナ」とミン・ユンギの「トニー・モンタナ」とは違う。
夢のその先にある破滅。
「トニー・モンタナ」と同じ轍を踏まぬように。
そのことを刻み付けるための一曲なのだろう。
自分の楽曲で呪いをかける、これこそミン・ユンギにとっての「Agust D」の存在だんだと思える。
「Feat.Yankie」バージョンと
「パク・ジミン」バージョン
「トニー・モンタナ」には2つのバージョンがある。
後半のラップの演者が違う。
Mixtape 「Agust D」に収録されているのは「Feat.Yankie」のバージョン。
Yankieは、韓国のHipHopユニットTBNYのラッパーで、BTS(防弾少年団)にとってラップの先生をしていた時期があるという。
もうひとつのバージョンは、ミン・ユンギとパク・ジミンが共演した2016年のファンミーティング「ARMY ZIP+ 3rd MUSTER」(会場は高尺スカイドーム)でのもの。
後半のラップ部分をパク・ジミンが彼の物語をリリック。
パク・ジミンの物語も、興味深い(カッコいい!)。
またどこかで披露して欲しいな、ラッパー、パク・ジミン。
「Tony Montana」|Agust D
パク・ジミンのラップシーン
「Tony Montana」でみせるJIMINのうなる声、悪い言葉。
もう最高じゃないですか…。
JIMINが言う「世界はおれたちのものさ」も、もはや誰も反論のしようがあるまい。
一方、むしろより深くなるお辞儀や謙遜の言葉、恥ずかしがる姿に、「トニーモンタナ」みたいにはならない、という戒めが行き届いているように感じる。
この楽曲も、Agsut Dの楽曲ではあるが、BTS(防弾少年団)の7人がしっかり共有している物語のようだ。
...と勝手なことを書きました。
「Tony Montana」のここが好き、ここをこう読んだ、など聞かせていただけると嬉しいです。
ぜひコメントを、お願いします💙
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