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【高まる朝鮮半島の緊張】

メルマガ「週刊正論」令和6年2月29日号

月刊「正論」4月号は3月1日発売です。巻頭は朝鮮半島情勢です。
ジャーナリストで元東京新聞ソウル支局長の城内(しろうち)康伸氏と産経新聞客員編集委員の久保田るり子氏が、北朝鮮の動向についてじっくり語り合いました。一部を紹介します。

城内 統一の放棄を打ち出してきた最大の理由としては、北朝鮮への韓国文化の流入が止められないということがあるはずです。北朝鮮は鎖国政策をとっていますが、さらに南朝鮮との壁を高くしないといけない。

近年、北朝鮮は2020年に韓国のドラマや音楽などの視聴・流布を禁じ、罰則を強化する「反動思想文化排撃法」を、21年には若者の正しい生活習慣を確立するための「青年教養保障法」を制定するなど国内の引き締めに懸命ですが、韓流の蔓延は止まらないようです。

例えば韓国で連続テレビドラマの第1回が放送されると、北ではそれから1週間以内にそのドラマの最終回まで見られる(!)との情報まであります。そのくらい猛スピードで拡散しています。これを北朝鮮は政権を揺るがしかねない要因だとして危機感を強めているのです。

久保田 食うや食わずの生活を送っている人たちが突然、キラキラ光る世界を見せつけられるわけで、韓流ドラマの影響力はすごいようです。日本でも「冬のソナタ」などが話題になりましたが、その百倍くらいの破壊力があるのでは。

城内 南の女性と北の男性が恋に落ちる「愛の不時着」も、相当人気があったと聞きます。
私は昨年11月に訪韓した際、脱北者出身の研究者に「なぜ北はそれほど韓流文化の流入を恐れているのか」と聞いたのですが、要するに南の文化だけでなく民主主義や自由といった価値観も一緒に入ってくるのを北朝鮮の政権は怖がっているというのです。

今の北朝鮮の若者たちは1990年代の「苦難の行軍」以後に生まれた世代ですから、そもそも国が頼りにならないことを実感しており、親世代や祖父母世代と違って国家への忠誠心はもともと薄い。そこに韓国の文化がどんどん入ってくると北の体制自体が揺らぎかねません。だからこそ、「あいつらは完全に敵なのだ」として韓国文化を完全に遮断しよう、というのが「南との絶縁」「統一の放棄」の最大の理由だと私は見ています。

では金総書記がなぜ祖父・金日成と父・金正日の遺訓をひっくりかえしたといえば、続きは本編をお読みください。