シェア
落下。それは途方もなく救いがなくて、 でも、どうにもならない現実がその時だけは見えなくなって、 ただ、自分のことしか考えられなくなって、 安堵する。そんな一瞬だ。 * (この作品は三月の下旬に書かれました!) * 一周まわって帰ってきた春が、ようやく手の届くところまでやってくる。 それは、古い記憶のように柔らかく不透明で、 まだ乾き切らない洗濯物みたいな、 ぼんやりとした感触だった。 桜の幹に手を押し当てる。 バラ科の植物は、基本的に寄り