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SFショート

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黄瀬が書いた、空想科学のショートストーリー
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2021年10月の記事一覧

絵、むずい

 夜にまぎれた君は、影と同一化してしまって、  ひどくわたしを不安にさせる。  そのままとけていく場面をわたしは目撃できないまま、君を失ってしまうのではないか。  それだけはご免だから、わたしは君だけをくっきりと描きだす。  たぶん君に怒られる。  でも、そうすることにする。 *  絵を描くのは、特殊技能だと思っていた。  だから生まれてこのかた、わたしは絵を描いたことがなかった。  実家には幼いわたしが鉛筆を走らせたスケッチブックがあるだろうし、  授業