ショクダイオオコンニャクは7年に一度、2日しか咲かない

「~~オンリーワンが怖い。(3)」は書かない。結論は「普通の人になりたい」である。


自然はすごいなって話をする。2016年。筑波実験植物園で「ショクダイオオコンニャク」という植物が開花するというニュースがあった。ショクダイオオコンニャクは7年に一度、約2日間しか咲かないという珍しい植物である。その花は巨大で高さが約3.5mにもなり、「死体花」と呼ばれるほど強烈な腐臭を発する。

当時(留年や休学で4年制大学を4年で卒業できず)つくばに住んでいたおれは、このショクダイオオコンニャク開花目前!のニュースを聞いて開花まで毎日筑波実験植物園に通っていた。暇だったのだろう。筑波実験植物園は提携大学の学生あるいは教職員ならば入園料が無料なのである。

※もしこの文章を読んでいる大学生がいたら自身の所属大学が「国立科学博物館 大学パートナーシップ」に入っているかを確認してほしい。上野の「国立科学博物館常設展示」も無料で入館できる。非常におトクだ。ぜひこの制度を活用してほしい。

で、毎日足繁くショクダイオオコンニャクが開花するまで筑波実験植物園の温室に通いつぼみを眺めてた。開花直前!の段階でもちょいちょいと入園者が来ており、「いつ咲くかな?いつ咲くかな?」と心を踊らせていた。そして数日がたち、ついにショクダイオオコンニャクは開花した。そのニュースは全国ニュースなどでも取り上げられ、温室は結構な人だかりとなった。

そして約2日後。巨大なショクダイオオコンニャクはしぼみ、倒れた。入園者もずいぶん減った。その後もおれは毎日ショクダイオオコンニャクの温室に通いショクダイオオコンニャクの萎れていく花を観ていた。もう萎れたショクダイオオコンニャクを観に温室に来る入園者もほとんどいなくなった。

その後も何度も何度も植物園に通いつめた。実を言うと自分は植物に造詣が深いわけではない。植物園の楽しみ方、植物の観察方法、あまりよくわからない。「筑波実験植物園で一番楽しいところはなに?」と尋ねられれば、「自然史標本棟見学スペース」と答える。何かと言えば「上野の科博」に展示する動物の骨格標本などがガラス越しにちょっとだけ観ることができるスペースである。筑波実験植物園には「国立科学博物館の標本の収蔵施設」が隣接しており、ソレをみることができるのだ。要するにおれにとっては「植物園で一番楽しいのは、ちょっとだけガラス越しに観られる動物の骨」なのだ。「園内でたくさん観察できる様々な植物はいくら観てもなにがなんだかわかんないけど、ガラス越しの動物の骨はとっても心躍るのだ。「死んでても動物はドキドキするのに植物はいくらあってもつまんねーな」とか言っていた。植物園に何しに来てるのかわからない。植物音痴だ。

さて萎れたショクダイオオコンニャクである。ショクダイオオコンニャクの花が萎れた後ももう習慣として毎日毎日筑波実験植物園に通い、温室でぶっ倒れてしおしおになっていくショクダイオオコンニャクを眺めていた。

もうショクダイオオコンニャクを眺めにくる入園者はほぼいなかった。ショクダイオオコンニャクが脚光を浴びるのは7年に一度、開花する2日間だけなのだ。

ショクダイオオコンニャク。芸能人で例えればいわゆるとてつもない一発屋である。人気がありチヤホヤされる期間はごくわずかであり、そのは誰にも見向きもされない。

ところでショクダイオオコンニャク、7年に2日間だけ開花する花である。この花、シデムシという腐臭につられてくるコウチュウを媒介者として受粉をするらしいのだが、ショクダイオオコンニャクの生えているスマトラにはこの花は複数株が同時に開花するのだろうか。

素数ゼミという蝉がいる。13年ゼミ、17年ゼミという素数周期で大量発生するセミで、それぞれが素数周期で大量発生することでそれぞれの種が交雑することを防ぐのだそうだ。

じゃあこのショクダイオオコンニャクはどうなんだろう。スマトラ島ではこの7年に一度しか咲かない巨大で腐臭のする花が複数株開花するのだろうか。この花、スマトラ島で別の花が同じタイミングで咲いてないとなると自家受粉しか出来ないことになる。園内の係員に聞いてみたが「よくわかりません」と解答を濁された。

ちなみに筑波実験植物園には当然ながらショクダイオオコンニャクは一株しか植わっていない。このショクダイオオコンニャクは7年に1度、2日間だけチヤホヤされて、自家受粉しか出来ずにしぼんでいくのである。

ナンバーワンとオンリーワン、オンリーワンとワンオブゼムの話をもう一回してみようか。ショクダイオオコンニャク、数7年に一度しか咲かない巨大な珍しい花でありナンバーワンである。また実験植物園の目玉のオンリーワンの人気者でも有り、人々からチヤホヤされ、2日で自家受粉してしぼむ。

こんな生き方は、ショクダイオオコンニャクのような生き方は、幸せなんだろうか。

ワンオブゼムのテキトーでどこにでも咲いている”普通の植物”として”普通の花”を咲かせ、そこら中に咲いてる”普通の花”と受粉し、誰にも注目されずに堅実に子孫を残したほうが幸せなんではなかろうか。

また長々とショクダイオオコンニャクの話題を書いたが、何がいいたいかといえば要するに、おれはショクダイオオコンニャクのようにオンリーワンではなく、「普通の野草」になって「普通の花を咲かせたい」のだ。いろいろな花があるけどどれもみんなキレイだが、ナンバーワンにもオンリーワンにもなりたくない。

ワンオブゼムの花。どこにでも咲いてる野草の一株になりたいのだ。

またまた妖怪人間風に。「早く普通の人間になりたい!」のだ。

もういいや。また同じような結論だ。ろくに推敲も誤字脱字チェックもせず「ポチッとな」だ。公開ボタンを。

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