[Bookmark] データを見ない人々(「オープン化」する社会での「分析」の価値) | isologue

先日、マスコミ業界に詳しい方と話をしていて、なるほど、と思った話。
マスコミの人って、データを全く見ないんですよね。
代理店の人ですら。さすがにマーケの人は別だけど。
例えば、子供向け出版物の売れ行きが落ちている説明として、会議で担当者が、
「少子化が進んでいるので」
なんて説明をしたりするけど、調べてみるとここ数年、実は小学生の数はほぼ横ばいなんですよ。
今やインターネットで政府の統計なんか簡単にタダで調べられるのに、調べない。
データがいくらオープンになって、タダでインターネットで見られるようになっても、見ない人は見ないんじゃないでしょうか。
実際に「学校基本調査」の小学生の在学者数の推移を調べてみますと。
こういうグラフ

図表1.小学生の在学者数の推移(単位:人、平成[年]、出所: 学校基本調査)
を見ると確かに「ものすごい勢いで少子化が進んでいてたいへんなことだ」という気にもなりますし、減っているのは事実なのでマスコミの報道も「少子化がうんぬん」ということになってるわけですが、
人数をゼロを起点に設定したグラフで見ると、

図表2.小学生の在学者数の推移(単位:人、平成[年]、出所: 学校基本調査)
・・・のように、小学生の数はほとんど変わってない印象になります。
(数値はまったく同じですが。)
平成14年から平成21年までだと、わずか2.4%しか下がってない。
年平均だと0.3%ペース。
うちの近所の小学校や中学校の生徒数は逆に増えていて「少子化なのに恵まれた地域だなあ」と思ってたんですが、要するに少子化というトレンドはミクロな地域で見ると誤差の範囲の話でしかなかった、ということですね。
もちろん「全体として子供の数が減っている」のは間違いではないので、例えば政府が少子化対策に力を入れないでいいかというとそうではないでしょうけど、だからと言って、子供向け出版物の売上が2桁ペースで下がっていることの理由として少子化をあげるのはおかしい(理由は他にある)、ということになります。
以前も、「(有価証券報告書等の開示が見られる)EDINETへのアクセスは、私のブログへのアクセスと人数が大して変わらない 」とビックリしたお話を書きましたが、最近、おかげさまでブログのアクセスが伸びているので、現況だと下記のような感じです。

図表3.EDINETと弊ブログのアクセス(リーチ。出所:alexa)
いくら個々の企業のホームページでも財務データを公表しているとはいえ、これってちょっと不思議ですよね?
経済学では「情報の非対称性」ということが言われますが、いくら情報を開示してもデータを見ない人はまったく見ない。そして、その「非対称性」は「無料でデータを開示する」だけでは全く解消されないものなのではないかと思います。
マスコミの人や投資家というのは、客観的に見ても日本の中では最もインテリ層に入るはずですが、そういう方々ですらデータを見る習慣が無いということは、日本の99%くらいの人は、おそらくほとんどデータを見ずに(「観念的」に)仕事や生活をしてるはずです。
誰でもデータが簡単にタダで見られる時代になり、Googleも登場すると、当然のことながら、「データを単純に右から左に流す機能」の価値は著しく低下します。
私がブログやメルマガでご提供している情報は、「私が独自の情報網で仕入れた超極秘情報」というよりは、タダで誰でも簡単に入手できる情報を分析・加工したものがほとんどなので、「そんなもんを見てもらえる時代は今のうちだけだろう」と思っておりましたし油断しているわけでもないのですが、一般論として、「データを分析する機能」の価値は今後もあんまり減らなさそうな気がしますし、むしろ「分析する人」にとっては、簡単に手に入る情報が増えて仕事はどんどんやりやすくなるので、分析する人としない人の「差」は、逆にオープン化でより大きくなるんじゃないでしょうか?
(ではまた。)
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先週までの「週刊isologue」では、国の1000兆円単位の話をしておりましたが、今週は(その1000万分の1の”小さな”話で恐縮ですが)数億円単位のベンチャービジネスの投資の話をしたいと思います。
今週の水曜日に「アゴラ起業塾」でベンチャーのファイナンスをテーマに講演をする予定 なんですが、そのレジュメをまとめていたところ、1時間ではやはり、あまりディープなことまでは話せなさそうで。
(あんまり難しいことをしゃべっても寝てしまう人も続出すると思いますし。)
そこで今回は、そこに収まり切らない部分について(「アゴラ起業塾」に出席させる方は「予習」も兼ねて)、ベンチャー投資における投資契約や種類株式の活用について考えてみたいと思います。
ベンチャーファイナンスの概要については、 2001年からINTERNET MAGAZINEに連載していた「コーポレートファイナンス入門」というシリーズ をウェブで公開してますので、そちらをご覧いただければと思います。8年前のものなので「商法」が「会社法」に変わっていたりする部分はありますが、基本的な考え方は変わってません。
シリコンバレーをはじめとするアメリカのベンチャービジネスへのベンチャーキャピタル(VC)等の投資では、ほぼ必ず優先株(preferred stock)が使われるのに対して、日本のベンチャー投資ではあまり種類株式は使われません。
SOX法やJ-SOXなど、上場企業への内部統制の要求は世界的に厳しくなってきており、上場のためのハードルやコストも昨今非常に高くなってます。
つまり、今後のEXIT(投資家の投資の「出口」)は株式上場だけを考えるのではなく、バイアウト(未上場のままM&Aで買収される)を考える必要が潜在的に高まっていると思いますが、そういった状況に対応するためには、実は種類株式等を活用することが必要になってくるんじゃないか、といったお話です。

・・・ということで。
今週の目次&キーワードは以下の通り。
- 投資家側から見た問題点1:投資したのにEXITできない
- モニタリングの工夫
- 上場の努力義務と株式の買取条項
- 投資家側から見た問題点2:期待したほど額のEXITができない
- 優先分配権
- 「○倍の優先分配権」
- 各種拒否権
- 投資家側から見た問題点3:「経営陣だけ売り抜け」
- 「共同売却権」
- 「先買権」
- 投資家側から見た問題点4:投資家間の不公平
- 株価修正条項
- フルラチェット
- 「修羅場」に関係者のインセンティブを適切に調整できるメカニズム
ご興味のある方は、下記からお申し込みください。
(ではまた。)

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