0-1.統計地政学とは何か

 統計地政学についての需要が思ったよりありそうなので、統計地政学の知識についてのnoteをまとめていこうと思います。一週間から数週間に一度くらいのペースでまとめることを目標とします。

 2019年11月現在、ウィキペディアに乗っている程度の説明としては、地政学とは「地理的な環境が国家に与える政治的(主に国際政治)、軍事的、経済的な影響を、巨視的な視点で研究するもの」となります。しかし、実際に地政学の本を買ってみればわかりますが、国家に関しての様々な考察や様々な地域、ランドパワーやシーパワーといった重要な単語に関する文章による解説はあっても、地政学の根底にある理論を数理的に述べている本は殆ど存在しません。

 本来の地政学は、そのように言葉でのみ説明されるものではありません。マルサスの「人口論」を元にドイツで発展したこの学問は、本来は数理モデルを用いて人間組織が最低限満たさなければならない条件を数学的に解析するものです。組織の人間が生み出す全ての資源を統計的に扱って時間の関数とみなし、組織の支配領域を構成する道をグラフ理論を用いてモデル化し、それらの関数を用いて未来を予測・計算し、組織を評価します。このnoteやマガジンにおける統計地政学、あるいは単に地政学とは数理モデルを用いた本来の地政学のことを指しています。

 しかしながら、地政学という学問は「資源の量に人間の数や行動を合わせることを肯定する」という、極めて野蛮な性質を持っています(なにしろ、ウィキペディアにすら地政学には主観性や前時代的な性質があると書かれてしまう程です)。それは統計地政学であっても何一つ変わりませんし、むしろ論理的に説明するために悪化すらしています。そして残念ながら、地政学はその野蛮さ故にかつてナチスがホロコーストなどの政策の理論的支柱として利用したという明確な事実があります。彼らの手による地政学の悪用により、地政学の進歩は百年単位で遅れ、その資料の大半が散逸してしまいました。私が学んだ地政学の内容も多くは師から直々に教わったものです。

 本マガジンのnoteにおいても、地政学という学問が野蛮であることは一切否定しませんし、できません。倫理的に大問題な解がバンバン出てきますので、そのためのゾーニングは必要であると考えています。本マガジンの読者の方には、くれぐれも地政学を用いて他者をむやみに攻撃することの無いよう、お願い申し上げます。



ありがとうございます。