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代代代 New Album ∅ について

2019年7月21日
大阪府内某所で行われたDEMONTAPES初の懇親会(BBQオフ会)終わりの送迎バスの中。
偶然隣の補助席に座ってきた小倉ヲージ氏と以下の様な会話をした記憶がある。
「オーディションどうですか?良さそうな子きてますか?」
「うーん、まぁそれなりにはきてるかな」
「祐生佳、六花、みすゞが抜けるとなると声質のバリエーション的にSweetな部分を担う子が居なくなっちゃいますけどそのあたりも選考する上で意識してますか?」
「まぁそうだねぇ。。。ってイカン!俺すぐしゃべっちゃいそうになるから駄目だ!怒られちゃうから何もしゃべらない!」
結局、そのときは何も聞き出せなかったのだが、3人の卒業後、新体制を迎えるにあたり私が一番気になっていた部分についての小倉ヲージ氏の答えは、10月27日にOSAKA MUSEで行われた新メンバーお披露目の我我我という名のフリーワンマンではなく、今回リリースされた新体制初のアルバム∅にあるのではないかと私は思っている。
なぜなら新体制お披露目と同時にリリースした”すべては薄命の中で”はソロパートもなく新メンバーの声の特徴を活かしたものではなかったし、既存曲への対応についても、六花パートを出雲なるが、みすゞパートをヒメカノンがそれぞれ引き継ぐという、いわば単純なリプレース対応だったため、小倉ヲージ氏の手が加わったものにはなっていなかったからだ。
今回届いたNEW ALBUM ’’∅” (小倉ヲージ氏によると読み方は無い)については既に複数の音楽的視点のレビューを目にしているが、今回私としては各メンバーの声について着目した話をしたいと思う。

各曲の話題に移る前に、まず最初に言っておきたいことがある。
カノンちゃん、おめでとう!
ヒメカノンは前述の通り既存曲に対してみすゞのパートを引き継いでいるのだが、元々得意のダンスに比べて歌は比較的得意ではない中、みすゞパートを歌うにあたり、元のイメージに近づけようと意識しすぎてかなり無理な発声をしているように私には聴こえていた。なので、早くヒメカノンがヒメカノンとして歌える新曲を作ってあげてほしいとずっと心待ちにしていたのだ。
”∅”の中のヒメカノンは彼女が本来もっている声が活かされる形となっており、そこにはもうみすゞの亡霊(失礼)に悩まされる姿はない。それは既存曲の焼き直しである”8 BIT GAG”や、”くちうつしうつくしゐ”においてもだ。
一方、出雲なるに関しては元々素直な声質の持ち主で、六花パートを引き継ぐにあたり一定以上の親和性があったと思われ、ヒメカノンに比べれば我々リスナー側からも比較的すんなりと受け入れられた感があるが、それでも自分のソロパートがふんだんに入ったアルバムがショップに並ぶということは本人にとっては喜びもひとしおだろう。
いずちゃん、おめでとう!
では、各曲についての話に移ろう。

01.すべてが薄明の中で
新体制お披露目と同時発表した既存曲である”すべては薄命の中で”のリメイク。
トラックの変更ももちろんだが、タイトルだけでなく中身のLyricもかなり書き換わっている。
ぱっと聴きすぐわかる部分(ダンスで頭を振り乱すパート)以外にも、非常に細かい変更が加えられているので両方の歌詞カードをよく比較してみてほしい。
(自分で比較するのが面倒な方は、私が作成した差分がわかる画像ツイートを参照してください)

02.やめさせろとめさせろ
歌始まりから8小節(もしくは16小節)で明らかに今までとは違う代代代を感じることができる。
出雲なる、梨央、宮衣紗羽、ヒメカノンと続くAメロは新メンバー二人が新たな風をもたらしながらも梨央、宮衣紗羽の声であくまで代代代であることも同時に感じさせてくれる。
これが今までにない曲調と相まって、代代代の新たな時代の幕開けを予感させる。
丹南偲穂から再びヒメカノンと続くBメロも丹南偲穂の曲調に合わせて抑えの効いた軽快な歌声とヒメカノンのCUTEな歌声のコントラストがカラフルな印象を強めている。
ユニゾンで歌うサビは正直誰と誰の声が組み合わされているのか正確に判別するのは難しいが、ストロングタイプである梨央、丹南偲穂と、クールな声質の宮衣紗羽、比較的それに近い出雲なる、そしてCUTE系のヒメカノンのそれぞれの声をうまく割り振ってメリハリを利かせているようだ。
再びAメロ。梨央からヒメカノン、1番よりも少しギアを上げた丹南偲穂、宮衣紗羽と続く。
個人的にここの宮衣紗羽の「ただシニカルだ」が語感と声質の面で非常に気に入っている。
Bメロは梨央と出雲なるで構成されている。梨央はあいかわらず安定した歌唱。出雲なるについては先日本人がツイキャスで語っていたが、出雲母曰く、「声が宮衣紗羽さんに似ている」らしい。
確かに今回ソロパート割りの確認時もいくつか迷う箇所があった(そもそもすでに記載した箇所も間違っていたら申し訳ない)。が、宮衣紗羽の方がより声に特徴を感じるため、消去法的にこれが出雲なるかな?という感じで判別した。ツイキャスのコメントで本人にも伝えたのだが、もう少し声や歌い方に出雲なるの色を出せていければ更によくなると思っている。出雲なるに関してはダンスも含めて伸びしろだらけなので今後に期待したいところだ。しかし、だからといって今回のアルバム内で出雲なるが埋もれてしまっているかというとそうではない。ここの「ある事ない事書き込んでやるわ」もなかなかいい味出ていると思う。

6月22日追記)出雲なるの声についてはこの記事の投稿後にファンで座談会配信した際に某有名床レビューアーの方から猛反論をくらい、結果的に出雲なるの声の特徴、強みついてより理解が深まった。彼曰く、宮衣紗羽は女の子、出雲なるは少年の響きを持っているとのこと。言われてみればそんな気がしてきたし、6月21日に行われた小倉ヲージPを交えたメンバーの座談会配信(実態はまきちゃんによる小倉ヲージPのインタビューになってしまっていたが)でもヲージ氏も出雲なるの声を非常に気に入っており、後述する4曲目のパート割りの件にも繋がっていたようだ。追記部終わり)

と、ここまで書いたところで、このペースでレビューしてたら終わらない気がしてきたので以降はもう少し簡単に。

03.愛ね暗いね
個人的に今回のアルバムで、OH HAPPY DIEと並んでお気に入りの曲。
冒頭から宮衣紗羽→出雲なると続くため、両者の声質の比較がしやすい(この並びはサビ前にも出てくる)。
そして恐るべきはヒメカノンである。どうやらヒメカノンは声質をかなり使い分けており、同じ曲のなかでもしっとり歌っている箇所もあれば、可愛い方向に振った歌い方、さらに振り切ったいわゆる”でちボイス”までを巧みに使い分けている(あるいはいろんな歌い方で複数テイク録音した後、小倉ヲージ氏が最適なチョイスをしているのかも知れないがそこは今度話す機会があれば聞いてみたいところ)。正直言ってステージ上のヒメカノンの歌は上手とは言えないものだったが、今回のアルバム中のヒメカノンに関して言えば(音程等デジタルな修正が入っているであろうことを考慮しても)なかなかの表現の幅と力を感じる。
宮衣紗羽感たっぷりのタイトル部を経て、梨央、宮衣紗羽と続くメロディーが心地よく、小気味良い。さらにユニゾンからのヒメカノン、ユニゾンからの出雲なるで1番を締める。
2番も見どころたっぷりだが長くなりすぎるので割愛する。が、一つだけお気に入りポイントをあげておくとすると、丹南偲穂の「この声聞こえているかな?」だろうか。

04.棺桶だらけかと思った
「棺桶だらけかと思った」という不穏なセンテンスからわざとらしいほどに前向きな言葉が並ぶ塊が繰り返されるちょっとシニカルな印象を受けるLyricに合わせて歌声にもエフェクトが施されている。
各ソロパートが8小節ずつと長めに割り振られているため歌割りの確認は比較的容易であったが、宮衣紗羽、丹南偲穂、ヒメカノンときたあと、出雲なるパートが16小節続いているように聞こえていてちょっと合っているか自信がない(エフェクトの影響もある)。サビ(?)前まで8小節のパートが5つあってメンバー5人だから均等に割り振るのが自然な様にも思うのだが、梨央の声はサビ後の一か所しか確認できない。謎。
2番のサビ前にかなり長め(12小節くらい?)のブレイクがあって、あーちゃんさんがどんな振り付けをするのかとても楽しみ。

05.細胞
各メンバーが8小節ずつしっとりと歌い上げる。
梨央、出雲なる、丹南偲穂、ヒメカノン、宮衣紗羽。各メンバーの表現力を楽しめる曲。

06.8 BIT GAG
旧体制での2019年3月3日の大阪ワンマン(黒い朝)でDLコードで限定販売された”8 BEAT GANG”のリメイクであり、歌割りも変わっていないようだ。
ずっと聴いていて歌詞は変わっていないと思っていたがあらためて歌詞カードを比較すると音の響きは変えずに漢字や表記を入れ替えたりして遊んでいるようだ。元々の歌詞自体がまったく意味のないナンセンスなものであるが故にこのようなことが可能なのだろう。
聴いた印象だと原曲よりもBPM若干高めかと思ったがどうやら同じようだ。
原曲にある「愛!愛!愛愛!愛!愛!愛!」のパートが無い分、曲自体は短くなっている。
この曲の一番の注目ポイントはツイッターにも書いたが、落ちサビ後半に突然発動する”でちボイス”だ。

07.ボロノイズ
視聴会でリスナー達を震え上がらせた問題作。
禍々しいトラックとLyricで綴る13分越えの呪術のような曲
梨央の声は凛々しく
宮衣紗羽の声は冷たく
丹南偲穂の声はおどろおどろしく
ヒメカノンの声は幼な子のように
出雲なるの声は少女のように
それぞれの響きが紡ぐ圧倒的13分40秒

08.OH! HAPPY DIE
DRINKPEDのカバー曲だが、Apple Musicにはオリジナルは見つけることが出来なかった。
CDの一般販売・サブスク解禁に先駆けてMVが公開されたのでそちらも是非見ていただきたい。
5人の声がうまくちりばめられ、トラックやMVも相まって非常にカラフルな曲に仕上がっている。
落ちサビが超脱力系というのも今までの代代代にはなかったテイスト。
”愛ね暗いね”と並ぶ今回の個人的推し曲。

09.くちうつしうつくしゐ
前体制ラストシングル”くちうつしうつくしい”のリメイク。
前体制からのファンには非常に思い入れの強い曲だが、原曲の良さを引き継ぎつつヒメカノンのちょっと甘えた歌い方含め、しっかり新体制の曲として生まれ変わっており、問題なく受け入れられると思われる。
この曲はなんといっても梨央の落ちサビにつきるのだが、最後の部分の歌詞が書き換わっているところにも注目して欲しい。個人的にはタイトルの最後が”い”から”ゐ”に変わっているところと、最後の歌詞が書き換わっているところに因果関係を感じているが、これも後日小倉ヲージ氏に聞いてみたい。

以上、代代代の新譜”∅”について、歌声に着目してのレビューでした。
個人的に、ようやくあのときバスの中で小倉ヲージ氏に聞いたことへの返信を貰った気がして勝手に感慨深く思っている。
非常に長くなってしまいましたが、最後まで見ていただいてありがとうございました。
注)歌割りについては個人の確認結果であり間違っている可能性があります。

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