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【情熱のラブディスタンス・キャンペーン】

 先日の記事でも書いたように、4月13〜15日はソンクラーン(タイ伝統正月)に当たる。

 しかし、タイ人の間では実質的に週末の今日からソンクラーンモードに入り、例年ならば全国的な帰省ラッシュが始まるところだ。

 むろん、タイ政府はすでにコロナ感染拡大防止策の一環として期限未定のままに延期を決定している。

 そして、文化省は以下のようなガイドラインを4月初めに発表した(日本語訳はタイ日本人会イベント情報サイトより転載加筆)。

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【タイ王国2020年ソンクラーン行事に関するガイドライン】

1.いかなる形であってもソンクラン・フェスティバルは開催しない。
2.地方の実家に帰省することを控える。
3.年長者へ水をそそぐ行為を控える。
4.人込みや危険度の高い地域への旅行は絶対に避ける。
5.ソンクラン行事を行う場合は以下の方法で。 
 (1)自宅に置いてある仏像に水をそそぐ。
 (2)同居家族だけで感謝を伝え合う。その際は1m~2m
   の距離をとりマスクを着用する。
 (3)遠方の家族とは、電話やビデオ電話を使って感謝を
     伝え合う。

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 この実に平明なガイドラインを読めば、タイ政府がいま「ソンクラーンを契機にした感染爆発」をもっとも警戒していることが、幼い子供にでも分かるだろう。

 並行して、保健省がソンクラーンを前に国民の心情に訴える「親を守ろうキャンペーン」を行っているのも、無症状感染者や軽症感染者から高齢者への感染拡大を防ごうとしているからに他ならない。

 ちなみに、3番目はダムフアと呼ばれる年長者表敬伝統行事だ。

 正確には「年長者の手の平に水をそそぎ、お返しに手首に糸巻きをしてもらう」ことになる。

 写真はカレン族の結婚式における糸巻きの様子だが、このように膝を付き合わせて対面せざるを得ないから、お互いの顔は息がかかるほどに近づいてしまう。

 いわゆる「社会的距離」など保ちようもない。

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 タイ国内ではすでに非常事態宣言が出され、国全体としては国境閉鎖、施設閉鎖、夜間外出禁止、5月から7月への新学期開始延長などを実施。

 各自治体でも、独自の判断で県境・郡境・集落封鎖、アルコール販売前面禁止などを矢継ぎ早に打ち出している。

 このチェンマイ県でも夜間外出違反で多数の逮捕者が出ており、他県では違法パーティーをした外国人やタイ人、マスク無しで出歩いていた外国人やタイ人の逮捕が相次いでいる。

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 ソンクラーンのガイドラインについても、こうした強権的措置を取ることは可能だろうが、賑やかな正月宴会はともかく、家庭内でひっそりと行われる正月行事は抑えようがあるまい。

 だからこそ、このガイドラインと「親を守ろうキャンペーン」は、もっと大々的に繰り返して通達徹底されるべきだろう。

 メディが多用する「ソーシャル・ディスタンス」はすでにタイ語同然に使われており、この田舎町周辺の商店でも安易な入店を遮るように置いたテーブルの上に、英語表示がなされていたりする。

 対外的には、いかにも直訳的で訳の分からん「社会的距離」でも仕方がないだろう。

 だが、夫婦や恋人ならずとも、家族親戚、友人、知人など近しい関係の場合には、敢えて「ラブ・ディスタンス」

 つまりは、「愛の人間(じんかん)距離」という言葉を提唱したい。

 それは、見知らぬ人にも絶対感染させないという同胞愛、さらには人類愛にもつながるはずだ。

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