【祭りの準備】
タイの伝統正月で「水掛け祭り」として観光の目玉にもなっているソンクラーンが、ついに一週間後に迫って来た。
むろんタイ政府はすでに、人が密集乱舞するこの行事を期間未定のまま延期することを決めている。
しかし、それは仏像への水掛けパレードなど各種公式行事や無礼講の水掛け合戦などの抑制にはつながるのだろうが、本来の意味合いが持つ静かなる「正月行事」は抑えようがないのではあるまいか。
とりわけ、各家庭で行われるダムフア(親をメインとする年長者への表敬・相手の手を聖水で浄め手首に聖糸を巻いてもらう)や寺院への参拝は、こうした不安で苦しい時期だけに、人々は例年以上に心を込めたがるに違いない。
すでに移動は厳しく規制されているとはいえ、実家への帰省の願いはとどめようがないだろう。
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例年、寺院では人々が献納する砂によって「砂の仏塔」が作られる。
普段の参拝で人々は神聖な境内の土や砂を無意識の内に足の裏につけて外に運び出しているのだから、新年にはその非礼を詫びて砂を境内に戻し、新たに仏教への帰依を誓うという意味合いらしい。
そして、日本の七夕飾りに似たトゥン(干支模様が描かれた紙や布の飾り旗)を仏塔に差し込んで、先祖供養を初めとするさまざまな願い事をする。
また、写真のような先端がY字型をした枝の皮を剥いで色紙を巻いたり色を縫ったりして作ったマイカムポーと呼ばれる棒を、境内の菩提樹を支えるようにして奉納する。
これには、仏陀が悟りを開いたとされる菩提樹、つまりは仏教の教えを守り支え、なおかつ自らの信仰心を支えるという意味合いが込められているという。
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さて、写真のマイカムポーは昨年と同様に近所の爺様が自分で作って、すでに数日前から自宅の前で販売しているものだ。
去年は私もこれを買って、Y字の部分に花を供えて近所の寺の菩提樹に奉納した。
むろん、作り手の爺様も祭りとしてのソンクラーンが延期されたことは知っている。
しかし、近所の人々が寺院に参拝するときにこのマイカムポーを必要とするということもまた熟知しているのであろう。
そうして、さほど込み合わない田舎町の寺院におけるトゥンやマイカムポーの奉納は、人との距離を保って極力会話を交わさないようにすれば、あえて自粛する必要はないようにも思える。
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タイ当局は昨日、外国からの航空機飛来禁止令を18日まで延期すると発表した。
それは、13〜15日のソンクラーン期間における爆発的な感染拡大を抑えるための措置であることは間違いないだろう。
そうして、すでに多くのタイ人がささやいているように、間もなく24時間外出禁止令発令というのが、自然の流れのようにも感じられる。
なにしろ、ここ10日間あまりの感染者数急増は尋常ではない。
普段通りに電話で陽気に会話をしていても、タイ人の友人、知人たちは、こちらの想像をはるかに越えて心底恐れているのだと感じさせられることがしばしばだ。
この緊急非常事態を前にして、政府や自治体がもたもたしている方が、よほど異常だという認識だ。
さて、間近に迫ったソンクラーンをどう過ごすのか。
それは大げさではなく、タイの未来を占う試金石となることだろう。
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