なぜさけんでいるのか



演技が初めての人に、どういう演出をつけたらいいのか、という話と、
人が叫んでいるお芝居は苦手、という話。

だいぶ前に、映画をつくる人とそういう話をしたのでメモ。



叫んでる人が苦手な話から書きます。


舞台を観に行くときに、叫んでいる人を見るのが苦手、という話を聞きました。
たまに役者が終始叫んでいる作品とかあるけど、あれはなんでなんですかね、という。
私もそういうお芝居あまり得意でないのですが、じゃあなぜそういうお芝居になるのかというのを考えまして、
どういう順路で叫ぶ結果になるのかについて考えてました、

恐らくですけど、日本のめちゃ古典的なお芝居カルチャーに「役の感情」を表現する、いわゆる嬉しいとか哀しいとかを表現するのが演技だ、というのがあって、

これは新劇に由来するものだとわたしは思っていて、
スタニスラフスキー・システム(初期の)を輸入したものの、当時は翻訳劇を如何に本物らしくするかが大事で、リアルさを追求した結果付け鼻をつける(登場人物は西洋人だから)、みたいなこともあったらしいですが、
つまり、リアルに見えるように頑張っていたと思うのですが
その流れでリアルとは役になりきること→〈役になりきる〉→〈役の感情を生きる〉→〈役になりきって感情を表現する〉みたいな歪み方をしたのではないかと推察しています

ちなみに、私が捉えている感じで言いますと、スタニスラフスキーシステムでは、自分がこの状況になったらどうするかとか、想像を使うとか、そういうことが書いています、ざっくり
そして紋切り型の演技に陥るなとも言っています

で、役の感情を生きるのが演技ならば、それを突き詰めるのが良い演技ってことなのかな、というのが、なんとなく共有されていたのではないかと思います

それで、役の感情をやろうとすると、例えば絶対に許せないことがあってめちゃ怒る、みたいなことがあるときに、
怒るを突き詰めないといけなくて、
(演出家からも「もっと怒って」とか「怒りを爆発させて」とか言われるのかもしれない)
怒るを突き詰めた結果、叫ぶ、になるのではないのかという

そしてそれは多分嬉しいでも悲しいでも起きることで、
嬉しいのも大声で喜ぶ、悲しくても泣き叫ぶ、みたいな
感情を突き詰めた結果が、<叫ぶ>になりやすいのではないか
だから、みんな終始叫んでるみたいな芝居が、あるのかもしるない
ということを思ったのでした

しかも感情を表現する、というと、感情の持ち札が多くないとかなり狭い表現しかできないというのも弱点な気がしていて
仮に喜怒哀楽しか引き出しない人は、その4つの感情とその出力レベルだけで戦っているとも言えるわけで
しかも最終的には<叫ぶ>に行き着くとなると、それは全然表現としてはめちゃくちゃ幅が狭くなってしまう、、

叫んでる人は真剣に演技に取り組んだ結果叫んでいる、しかしながら表現的にはずっと叫んでいる芝居に見える。という

とはいえこの手のお芝居が散見されるのは、やはり演技する側からも見る側からもある程度支持されているから、だとも思っていて、
叫ぶのにはエネルギーも要るし発散もするので、おそらくやってる感がある、そして多分楽しいと思う
私もそれが楽しかったことあるし、未だに私の演技にも名残がある自覚もあります、(出てきた時めちゃ恥ずかしいけど)
見てる側も、なんか頑張ってる!すごい!とか思うのかもしれない(特に家族とか友達とか)

一方で、おそらく今スタンダードな演技は、行動をどう組み立てていくのか、ということを基本としていて、
それはどういう目的をもって行動するか、とか、相手にどのような働きかけをするか、というようなことなんですが
私の周辺の界隈ではおそらくこちらの演技が採用されているような気がします。統計とかはとったことないけど。
なので、私の周りでは終始叫んでるみたいな俳優さんはそんなに見ないように思います

(超蛇足ですが、何をするか、どう働きかけるかは行動なので、どの行動を選ぶか、どの動詞を選ぶか、というのが、演技を考える上で大事です、嬉しいや悲しいのような形容詞ではなく。
で、動詞辞典なるものもあるらしく、ほしい)

こういう、何を演技と捉えているかで、かなり雰囲気が変わるというか、
そりゃ演劇にも界隈があるよな、とか思います



もうひとつの演技の初心者にどういうふうに演出をすれば伝わるのか、という話で

なので、もっと怒ってください、とか、もっと嬉しそうにしてください、というのは、あんまり伝わらないのではないかと思っています
それよりは、見たい結果の演技を指示してくれたほうが取り組みやすいのではないかと
声を大きくしてください、とか、早口にしてください、とか、間を作ってくださいとか、
そちらのほうが伝えたいことと伝わることの誤差が少ないように思います
もっと怒ってくださいと演出されたときに、俳優がすでに怒ってますけど、、?と感じてしまうと、その先の演技の仕方がわからなくなる可能性があります
それならもっと大きな声出しください、のほうが対応しやすいと思う、、という


***

ちょっと書きなおしたけどここまでの文章は去年書いたもので、
すごくブーメランだな、、、とも思う

ナイトドミナントの振り返りもこのあと書きます

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