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2024/8/3(土)の宿題:幼馴染のシブツタが

 『今日の宿題』(Rethink Books編、NUMABOOKS)に毎日取り組んでみる14日目。

 くぼたのぞみさんからの出題(一部抜粋)

ガジェット文化の大都市は
目くらましばかり、ないものばかり。
(中略)
あなたはいま生き物をやっていますか?

※出題全文は素敵な言葉で書かれているので『今日の宿題』で読んでほしいです。

 渋谷TSUTAYAが2024年4月にリニューアルオープンし、SHIBUYA TSUTAYAとなった。
 私はTSUTAYAでCDを借りるのが好きで(というかCDで音楽を聴く世代だったので絶対必要で)、渋谷のTSUTAYAも利用していた。渋谷は他の店舗よりもフロア数が多く品揃えが豊富なので、近所のTSUTAYAにないCDを見つけることもあって、宝探しのような気分だった。お金のない中学~大学時代にたくさん音楽を聴けたのはTSUTAYAのおかげだ。
 渋谷TSUTAYAがレンタルをなくしてリニューアルするということを知ったとき、それがどういうものになるのかほとんど想像しないまま事実として受け止めていた。綺麗になるのかなあという漠然としたイメージのみを持っていた。どうして深く考えてみなかったんだろう。

 リニューアルしたSHIBUYA TSUTAYAにパートナーと一緒に行ったのは6月。上の方の階に好きなもののショップ出店しており、それが狙いだった。
 さて、新しいシブツタはどんな感じなんだろう? 期待に胸を膨らませ、エスカレーターを上る。しかし、上るごとに私たちは言葉を失った。目的の階で用事を済ませ、今度はエスカレーターを下る。1階まで下って店を出た私とパートナーは顔を見合わせた。
「シブツタ、なんにもなくなっちゃったね」と。
 レンタルを終了して空いたフロアは、何かの展示スペース、仕事もできるようなレンタルスペース(しかもべらぼうに高かった気がする)、カードの対戦スペースに占められていた。モノを売るのではなく空間を売ることになったんだな、と思った。それはとても現代の消費に合っている商売で、新しいと思う。
 しかし私たちが愛したシブツタの面影は無くなっていた。久しぶりに田舎に帰ったら幼馴染がすっかり変わっちまっていた、みたいな寂しさとやるせなさ。暑さと人混みにやられてささくれだっていた私たちは、新しいシブツタにとどめを刺されて足早に渋谷を後にした。

 我々に懐古主義的傾向がみられるのは否めない。新しいシブツタは、多くの人が関わって、知恵を絞って、手を動かして、いろいろなものの上に出来上がったのだということもわかる。
 でもあのエスカレーターから見た光景に、なんとなく「目くらまし」を感じてしまったのは事実だ。ただ寂しかった。あの豊富なCDはいったいどこへ消えたんだろう。

 空間が売られているという状態が、まだうまくつかめない。モノの手触りを信仰している。定額制配信サービス等の恩恵は受けているけれど、まだモノにしがみついて生きている方だ。自分が扱える限りは、好きなCDは持ち続けていたいし、本は紙で読みたい。
 こういう考え方をしている時点で大都市のスピードに乗り遅れた「生き物」という感じがする。生き物、まだやれてる気がします。
(というようなことを、インターネットの海でほざいておりますけども)



(くぼたのぞみさんについて)
 クッツェー作品を翻訳されている、読まねば。書肆侃侃房から出ているエッセイもおもしろそう。溜まり続ける読みたいリストと積読……。

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