鹿島オンザピッチ研究会 セットプレー
■研究方法
本研究で実施した方法は以下、2つ。
・FC東京戦から最終節までのセットプレーを観察
・セットプレーに関するデータをチェック
■セットプレー全体
データ
①セットプレーからの得点が23得点でリーグトップ
②セットプレーの得点割合が37.7%でリーグ2位
③攻撃セットプレー時のゴール率が3.1%でリーグ2位
④チームスタイル指数「攻撃セットプレー」が72でリーグトップ
※セットプレーからの得点とはセットプレー直接を除き、セットプレー後10秒以内にゴールインした得点。
※攻撃セットプレーとはアタッキングサードでのフリーキック、コーナーキック、スローインから始まる攻撃
昨年との比較
<チームスタイル>
攻撃セットプレー
昨年:指数72 シュート率 28.7%
今年:指数73 シュート率 23.3%
<得点パターン>
セットプレー直接
昨年:0
今年:1
セットプレーから
昨年:9 (16.4%)
今年:23 (38.3%)
考察
セットプレー全体をデータから考察していく。まず今年の鹿島はセットプレーをひとつの武器として勝ち点を稼いだチームと言える。しかし、セットプレーに振り切ったかと言われればそうでもない。昨年のチームスタイル指数と比較しても大きく変化したわけでもないので、正確に言えば「昨年まで入っていなかった分を得点に結びつけるようになった」と言った方がいいかもしれない。しかし相変わらず、フリーキックの直接ゴールは低く、ここが5点でも入れられるようになれば難しい試合でも楽に勝ち点を稼げたかもしれない。
■コーナーキック
データ
CB陣の得点
昨年:犬飼 2点
今年:犬飼 5点、町田 5点、林 2点、関川 1点
昨年から大きく改善されたコーナーキック。特に今シーズンは取るべき選手であるCB陣が見事に活躍した印象。相馬アントラーズはJリーグ屈指のヘディンガー軍団を擁するチームと言えるかもしれない。
観察
![スクリーンショット 2021-11-19 13.09.41](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/65982304/picture_pc_6e4a95cc1d49fdde1049b872582164f9.png?width=1200)
まず攻撃時のコーナーキックから整理していく。観察して見ていると大まかな役割とパターンが見えてきたので上記の表にまとめた。まず、コーナーキックで重要なキッカーだが、今シーズンは主にアラーノとピトゥカが担当。左右の振り分けで言えば基本的にアラーノが右、ピトゥカが左とキーパーから逃げるアウトスイングになるよう分けている。ただ例外的にインスイングにする時があるのでそれについて考えた。大分戦と鳥栖戦がインスイングを増やしていたのでその試合とその他を考えたときにある仮説が浮上した。GKのタイプだ。おそらく基本的にはアウトでやりながらも、対戦相手のGKが積極的にハイボールを処理するタイプの場合にはGKの前に土居を立たせてインと予測する。そして、ボールを迎える中の選手はというと、まずはGKの前に構えるのが土居。彼はGKの動きを抑制する役だけでなく、浦和戦のようなこぼれ球を押し込む役割も担っていると言える。カバー役は常本と安西のSBコンビ。彼らは試合の展開ごとに役割を変えている。おそらくこれは相手のFWにあわせてスピードの安西と空中戦の常本で分けている可能性が高い。ミスをすれば一気にカウンターを食らうだけに、このポジションに誰を置くかは地味に重要だ。実際に広島戦はカバー役の常本のゴラッソが決まっている。次にボールを受けるターゲット。ターゲットの動きには大きく分けて2パターンある。パターンはシンプルで、三竿がスクリーンになるかならないか。スクリーンになる場合には、町田もしくは関川や犬飼のマークをブロックする。そうでない場合は自ら飛び込む。その他、上田、カイキはニアに飛び込むことが多く、町田と関川はファーで待つのが多い。この役割分担は守備時のコーナーキックでも関係するので覚えていただきたい。役割を整理していくうちに見えてきた相馬アントラーズのストロングポイント。僕はカイキと三竿の存在が大きいと考える。Jリーグではそういない高さのあるボランチとヘディングの上手い2列目のアタッカーがいることでどこからでも得点の可能性があるのだ。結論、今のターゲットマン(上田、カイキ、三竿、関川、町田)は空中戦偏差値が高く、相手からするとどこかでミスマッチ(特にカイキ)が起きてしまう状況になるので厄介なメンバーだろう。
![スクリーンショット 2021-11-25 15.39.00](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/66410236/picture_pc_c07999c3f3b935c02d5ea2530fed80cd.png?width=1200)
次は守備時の話。守備時の役割も上記の通りまとめてみた。まず、今年の鹿島はゾーンとマンツーマンの併用を行う。マーカーは三竿、ピトゥカ、常本で相手のキーマンにピッタリつく。そしてゾーンにはニアにカイキと上田の順で飛び込むのに得意な選手を配置。そして町田と関川を中央配置する。背が低く、ヘディングに弱い土居、アラーノ、安西はカバーを担当する。こう見るとかなりバランスの取れた役割分担であるように思う。ここで僕が気になったのは、アラーノと土居の役割が左右で変わるということ。あくまで仮説になるがこれはカウンターアタックを計算した配置なのではないかと考える。具体的に言うと、ランニング能力に長けるアラーノが常に右足で使えるようになるのではないかと。逆に言えば左足を使わないように設計されているのだ(アラーノは土居よりも左にいかない)。そもそもコーナーキックからのカウンターの場合、いかに手数をかけずに鋭く精度の高い攻撃ができるかがキーになるため、アラーノをカウンターのキーマンにしている可能性は高い。また、ニアのカイキはアラーノとともにチャンスを嗅ぎ分ける勘がよく、惜しいシーンはいくつか見られた。
■フリーキック
フリーキック攻撃時、キッカーはピトゥカ、アラーノが基本。その次に交代で入る荒木や永戸、レオが主なメンバー。加入時、優良キッカーとして注目されたカイキはターゲットマンになっている。では、フリーキックでどのような動きがあるというと、大きく包めればワンパターンだ。町田や関川らのターゲット目がけるボールが多く、いわゆるスペースに送り込む形がほぼない。例えばGKとDFラインに速いボール入れて、カイキが届けるのも個人的には面白いとは思うが、それ以上にターゲットマンに合わせた方が確率が高いということだろう。次に守備時。ラインを作った時の順番は基本的にニアから同サイドのSB、上田、関川、町田、三竿、ピトゥカ、逆のSBの順になる。その前にこぼれ球を拾う土居、アラーノがいる。※壁の枚数によっても変わる。
■スローイン
次についてスローイン。サッカーにおいてスローインを一番担当するのはSBが多い。鹿島の常本はSB経験も長いことからか、スローインの精度はチームで一番正確そうに見える。特にボールを滑らせるスローは得意げ。これができると、中距離でもある程度味方にボールは渡せる。例えば、少し遠くのスンテに下げるなど。安西はクイックの近距離スローが多い印象。しかし、両選手ともスローインのリターンを受け手ロストするパターンがかなり多い。これにはおそらく以下の原因がある。まず、そもそも受け手との距離が近い。距離近いが故に二度追いされて自分にプレッシャーがかかってしまっている。それに鹿島の選手のスローインは味方に届けることを意識しすぎている印象を受ける。サッカーの目的はゴールを目指すことであって、いかに簡単にボールを前に運べるかはスローインにおいて重要なことである。それを踏まえると別に味方の足元に届けなくても、スペースにボールを送って前向きでプレーさせてもいいわけで、優先順位としてはそっちの方が高くなる。仮にクリアされてもオフサイドのないスローインでは深い位置から始められれば、相手を押し込むことができる。
次に守備時のスローイン対応について。下記データでもある通り、鹿島はスローインの阻止率が高い傾向にある。
2021年J1のスローイン成功率/阻止率のプロット。
— NeilS (@NeilsXeno) June 13, 2021
・スローイン成功率にはバラつきがあり、1-2位の札幌・川崎(約94%)と最下位のガンバ(約78%)の間には16%もの差
・鹿島は2割以上のスローインを阻止
・スローイン成功率/阻止率ともに優秀なのは、川崎(2位/4位)・徳島(3位/3位)・鹿島(6位/1位) pic.twitter.com/vGKJ6DPetS
その理由が何かを観察すると。チームとして優先順位を決めているのではないかという結論に至った。具体的に説明すると。
・目の前にマークがいる場合はタイトにつく
・背後にマークがいる場合には担当が変わる
・近場の相手にクイックでボールが渡った場合はそのリターンを狙う
・それ以外は基本的に下げさせればOK
基本的なことではあるが、ここらへんは選手間でよくコミュニケーションを取っており、整理されている印象にある。あくまでスローインだけの話にはなるが。
■参考
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