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愛犬・外飼いトイプードルの思い出07

犬友のいない犬だった。

愛想がないのか、マイペースなのか、臆病なのか、内弁慶なのか?

とにかく、散歩中にほかの犬と出会っても、自分から近づいていくことはほとんどなかった。いやむしろ、避けて通るか、道角でばったり出会ってしまったら「ウー」とうなるような犬だった。

だから必然的に、飼い主にも散歩友だちができなかった。散歩中、臭いを嗅ぎ合って仲良くしている犬たちや、楽しそうに談笑している飼い主さんの輪を見つけても、挨拶をするだけで仲間に加わることができなかった。散歩友だち作りたかったのに……。

犬好きで会う度に声をかけてくれる人にも、申し訳ないぐらい愛想が悪かった。

そんな愛犬が唯一仲良くしたのが、親戚の家で飼われていて、時々、家で預かる雄のトイプードルだ。そのトイプードルはもちろん室内犬だけど、庭で日向ぼっこをするのが好きで、外飼いトイプードルの愛犬と並んで日向に座り風に吹かれていた。

唯一の犬友は普通のトイプードルの二倍ほどの体高がある大きさだけど、穏やかな性格で、人の言葉もよく理解する賢い犬。毛の色がとてもよく似ていて、二匹を散歩に連れ出すと、同じ形の大きいのと小さいのが仲良く並んで歩き可愛かった。

預かり犬はとてもフレンドリーで、散歩中、ほかの犬を見つけたらどんな犬種でも尻尾をフリフリして喜んで近づいていく。もちろん人間にも愛想を振りまく。だから一緒に散歩をしていると、ちょっとやっかいなことになる。

早朝の住宅街、道の真ん中で左右に大きく離れた犬のリードを持ち立ち尽くす……なんてことになるのだ。何回かに一度は愛犬を抱えて、預かり犬と行動を共にする。そこで、普段は挨拶してすれ違うだけの犬の年齢や性別、保護犬だったなんて話を聞かせてもらう。そして必ず、外飼いの話になる。

近所ではちょっと知られた犬だけど、犬友がいないからこちらの素性はあまり知られていない。だから、何歳なのか?雄なのか雌なのか?暑くないのか?寒くないのか?なんてことを聞かれる。でも年齢を教えると、たいがい「もっと若いと思った」と驚かれる。歩くスピードも早いし、毛艶もいいし、なにより人見知りだけど元気だし。

だからきっと、「最近、散歩しているのを見ないけど、旅行にでも行ってるのかな?」と思われているんじゃないかな。まさか事故に遭って、しかも木の枝が直撃する事故に遭っていなくなっちゃったなんて、誰も思っていないだろう。

犬友がいなかった愛犬の死を、どうやって散歩で毎朝会っていた人たちに伝えればいいのだろう。わざわざ言って回るのも変だし。こんな時こそフレンドリーな預かり犬の出番なんだけどな……。




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