しれっとやることも大事

大学の授業でレポート提出が期限より大きく遅れたとか, 間違ったレポートを出してしまった, でもまだ提出場所が開いている。そういうときどうしますか?

「今から提出しても受け取って頂けますか?」と教員に聞く人がいます。それを好む教員もいるでしょう。しかし私はそれを好みません。

提出物を間違えて出したり期限を超えたりというのは想定外ですから「ダメです」と言えばすっきりします。しかし, よく勉強している学生が人生の大きな不幸に突然遭ってレポートどころではなかったということなら情状酌量の余地はあります。ところがそれが前例となると「○○さんは遅延提出を受け取って貰えたらしい」となって, 「私のも受け取って下さい」となり, 期限が意味を失います。

「情状酌量の余地があれば〜〜日後までは受け取る」などのルールを作るという手もあります。しかしそれはどんどんルールが増え, 運用を複雑化します。「情状酌量の余地」の定義も必要です。

そう考えると, 「今から提出しても受け取って頂けますか?」という質問には教員は「どう答えたらよいのだろう」と困ることがわかるでしょう。答え方によっては言質をとられ, より大きな説明責任を負うことになったり, 不明快・不適切な授業運営だと問題視されるリスクもあります。教員のリソースを消耗するのです。礼儀正しく丁寧に振る舞っているようで, 相手に負荷をかけているのです。

多くの学生はちゃんと期限を守っている人たちであり, このようなことで教員に負荷をかけたりしません。学生は同じだけ授業料を払っているのだから, 一部の人達が不手際で余計な負荷を教育システムにかけるのは不平等です。

ではどうすればよいのでしょう? ひとつの解決策は, 「しれっと出しちゃう」です。出したあと, 「これこれの事情で遅れて提出しました。ご迷惑と存じますが, ご覧頂けますと幸いです。評価についてはおまかせいたします。」と一方的に連絡すればよいのです。おそらくそのメールに返事は来ないでしょう。しかし教員はその人のそれまでの学習態度や事情を考慮し, 他の人にも不平等にならない範囲で教育的に妥当な判断をしようとするでしょう。少なくとも私はそうします。

もちろんこれは場合によりけりです。絶対に動かせない締切というものもあります。そもそもルールや規定に反することそのものが想定外なのだから, こういう場合にはこうすればよいという普遍的な正解はありません。だからこそ、配慮や振る舞い方といった人間力が問われるのです。

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