圧敗

僕はマリオカートに勝てない。
マリオカート "で"　ではない
マリオカート "に"　である。

気になっている女の子がいる飲み会に出席した。2週間ほど前からダイエットを始め、ネットで顔痩せ術なるものを調べブスなりに最高のポテンシャルを発揮できるよう努力した。ほぼ恋している女子である。
2軒飲み屋をはしごしみんなで友人の家に泊まる事になった。
僕はその子の気を引こうと最近あった自分の出来事をいろいろと話した。

否。

ラジオで聞いて面白かった話を自分の事のように話した。
反則なことは分かっているけど面白い人だと思われるならなんだってやってやるよ。
しかし、その子を含めみんなマリオカートに夢中で僕の話なんて聞いてもいなかった。
僕は拗ねた。
完全に拗ねた。
誰にも構ってもらえない僕はあろう事かポケットに入れていた穂村弘のエッセイを読み出してしまった。
マリオカートに勝てないし、勝つ事を諦めた。
そんな自分が情けなくて情けなくてしょうがない。この文章を書いている現在も後ろで楽しそうにマリカーをしている。
僕はそんなみんなに背を向けて携帯をいじっている。
楽しそう。
でもその輪の中に入れない。
僕が現代の瀬戸一貴なのかもしれない。
がんばれ一貴。
負けるな一貴。
明るい未来はすぐそこにあるのかもしれないぞ