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【美術ブックリスト】『絹谷香菜子作品集 KANAKO KINUTANI A Part of Me』

野生の鳥や虎、豹などを正面から見据えた肖像画のような動物画が人気で、近年は人智を超えた神的存在や宇宙といった壮大なテーマにも取り組む日本画家・絹谷香菜子の初の本格的作品集。現在、伊豆の池田20世紀美術館で開催中の「絹谷幸太・香菜子 二人展 万物の鼓動」(〜2023年1月10日)に発表された新作に、これまでの代表作を加えたのが本書。
幼少期からの作品制作への思い、土方明司氏による論考も収録し、英訳も併載してある。
ここまでが概要。

ここからが感想。
10月中旬に池田20世紀美術館の展示を訪ねたとき、画家が目の前の動物をモチーフとしつつも、動物たちの強い眼差しを通じて、生命や野生の息吹を伝えようとしていることが理解できた。ある作品ではそれが種としての動物ではなく、個体の個性として、つまりひとつの人格のようにも見え、動物の群れを描いた作品は生命活動の営みの断片を切り取ったようにも見えた。
このモチーフは、神、宇宙、平和といった抽象度の高いテーマでも生かされていく。そうした変遷が一冊にまとめられている。
動物を描いた日本画を「花鳥画」と呼ぶが、過去の様式とは異なる、写生から発展させた画家個人の様式を認めるべきだと思った。

48ページ B5判 2200円 アルテヴァン


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