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【美術ブックリスト】『世界の教養が身につく 1日1西洋美術』キム・ヨンスク著、大橋利光訳、上村博監修

1ページに1つのテーマで絵画や彫刻を解説。それを365日分掲載している。見出しのタイトルは作品名だったり、作家だったり、「写実主義」などの様式だったり、「ローマの建国」といった世界史だったりする。なかにはカラヴッジォとジェンティレスキが別々に描いた《ホロフェルネスの首を斬るユディト》など、同じモチーフ、同じタイトルで描かれた作品を同時に紹介したページもある。
順番は時代も地域もバラバラ。アトランダムにエッセイを楽しむつもりでページをめくり、気になる項目があったら関連項目へと読み進めるよう促される。
ここまでが概要。

ここからが感想。
著者は韓国で有名な美術エッセイストらしい。『怖い絵』シリーズがヒットした日本の中野京子さんのような位置付けなのだろうと推測した。
ジェンティレスキもそうだが、女性画家を意識的に多く紹介している。ヴィジェ=ルブラン、ロブスティ、モリゾ、フリーダ・カーロなどである。
類書もたくさん出ているので、この女性画家という点をもっと強く出すとよかったと思う。
単なる作品解説ではなく、一文一文に独自の視点や論点を入れているところがエッセイストらしいし、この本の魅力である。
ただ翻訳のせいか文章がやや長めなので、その分作品画像がやや小さく、発色も弱いのが残念。これも翻訳の問題だと思うが、一般にカスパー・ダヴィット・フリードリッヒと呼ばれるドイツの画家が、カスパル・ダーフィト・フリードリヒと表記されていて、こういう書き方もあるのかなあと思った次第。

392ページ A5判 2300円+税 日本実業出版社

《本書で取り上げる主な作品》
ミレイ《オフィーリア》
マンテーニャ《円形天窓》
フェルメール《真珠の耳飾りの少女》
ボッティチェッリ《ヴィーナスの誕生》
レオナルド・ダ・ヴィンチ《岩窟の聖母》
ポロック《ナンバー1》
マティス《赤のハーモニー》
フリーダ・カーロ《私の心のディエゴ》
ヤン・ファン・エイク《アルノルフィーニ夫妻像》
カイユボット《床に鉋をかける人々》
グイド・レーニ《クレオパトラ》
カミーユ・クローデル《分別盛り》
キルヒナー《兵士としての自画像》
カラヴァッジョ《この人を見よ(エッケ・ホモ)》
マネ《すみれの花束をつけたベルト・モリゾ》
ロートレック《ムーラン・ルージュのラ・グーリュ》
リオタール《チョコレートを運ぶ娘》
エル・グレコ《ラオコオン》
ルソー《詩人に霊感を与えるミューズ》
ティツィアーノ《ウルビーノのヴィーナス》
ブリューゲル《農民の婚宴》
ラファエッロ《ラ・フォルナリーナ》
レンブラント《テュルプ博士の解剖学講義》
ゴッホ《夜のカフェテラス》
クールベ《世界の起源》
フラゴナール《ぶらんこ》
ドラロッシュ《レディ・ジェーン・グレイの処刑》
アルチンボルド《ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像》

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