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【美術ブックリスト】『新しいアートのかたち: NFTアートは何を変えるか』施井泰平著

NFTアートとは、Non-Fungible Token(非代替性トークン)を利用したアート作品。と書いただけで、すでに分からないことだらけだろう。ざっくりいうと、デジタルデータとして存在するアート作品。デジタルデータというと簡単にコピーが大量にできるので、唯一性や希少性が担保されないと思われていたところ、新しい技術によってそれが可能となった。

そんなNFTアートが、これまでのアートとどう違い、どのような未来を拓いてくれるのか、現在の暫定的な見解を示している。というのも、理論的、技術的には可能ではあっても、まだ十分にアーティストによって作品が生み出され、現実に流通していないから。

本書は2014年に始まるといわれるNFTアートの歴史と代表的な作品を紹介しながら、さまざまな特性と可能性を解説していく。
ここまでが概要。

ここからが感想。
ビープルというアメリカのアーティストの作品がクリスティーズのオークションで75億円の値がついたことで一躍、熱い視線を集めたNFTアート。それだからかこれまでのところどうしても金融資産の発想でしか語られてきていない。というかデジタルアートについて語る言葉がそもそもないので、そうした金融の言葉でしか語られていない。本書ではそれをどうにか解きほぐそうと、ときとぎベンヤミンの「複製技術時代の芸術作品」に言及してもみるけども、なかなかNFTアートそのものの魅力や価値にまでは触れていないのではないかというのが私の感想。

NFTアートをアートの新しい一形態だと思っている限り、解明は難しいと思う。

●目次
はじめに
第1章 NFTは情報革命の「ラストパンチ」?
第2章 そもそもアートとは何か
第3章 NFTアートの「現在地」
第4章 未来をつくるインフラとしてのNFT

〔特別対談〕
アーカイブとシャンペン 坂井豊貴(慶應義塾大学教授)×施井泰平
文化的・社会的価値を加える 山峰潤也(キュレーター)×施井泰平
冒険者にインセンティブを 武田徹(専修大学教授)×施井泰平

NFT・NFTアート関連用語集

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