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【美術ブックリスト】『マチスのみかた』猪熊弦一郎著

著者は日本における抽象絵画の第一人者。戦時下のフランスに渡ってマティスに学び、帰国して従軍画家となったのち、戦後はアメリカで抽象表現主義の影響を受け、帰国後は具象と抽象を合わせた独自のスタイルで活動した。

本書は、「美術手帖」「別冊文藝春秋」「芸術新潮」「みづえ」「アトリエ」などの雑誌への寄稿文の中から、マティスをテーマにしたエッセイを集め、作品図版やアトリエでの写真など100点以上を添えたもの。

弟子から見たマティスの伝記の体裁をとった、珍しい作家論。
ここまでが概要。

ここからが感想。
平易な言葉でマティスを語っている。身近に接した人間として、画家としてなど様々な観点から語っていて面白い。セザンヌやゴッホとの比較、ブラマンクやドランといった野獣派の仲間との近似性、そもそもマティスが何を描きたかったのか、など様々なテーマで猪熊が繰り返しマティスについて書いていたことが分かる。東京都美術館の大規模なマティス展に合わせて刊行された本の中でも異色のガイドブックとなった。

208ページ A5判 2700円 作品社

【内容目次】
マチス
 マチスの絵/マチス先生を訪ねる/再びマチス先生を訪ねる/マチスの歩み/マチスのデッサン/マチスの色──油絵について
マチスとデッサン
マチス訪問記
デッサンとマチス
マチスの道
マチス覚書
 マチスと子供の世界/マチスと抽象形式/マチスと技法/マチスの素直さ/マチスとエレガンス
マチスの奇蹟
映画マチス
マチスとフォーヴィズムの作家たち
マチスを想う
マチス先生の死
マチス先生の思い出

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