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美術・アート系の本

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美術に関する新刊・近刊を中心にしたブックレビューです。
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#イラスト

【美術ブックリスト】『イラストで読む 奇想の画家たち』 杉全美帆子著

「イラストで読む」シリーズの一冊として2014年に刊行された本の新装版。ボス、デューラー、カラヴァッジォ、ゴヤ、ブレイク、ルドン、ルソーといった美術史の鬼才たちの作品と生涯をイラストで解説する。 時代時代の主流とは離れた形で彼らが制作した作品の意義や、画家自身の数奇な人生や個人的トピックを解説している。 ここまでが概要。 ここからが感想。 いまでは類書がたくさんでているけども、画家たちについてちょこっと知るにはちょうどいいかも。 カラヴァッジォが通称で、本名はミケランジェ

【美術ブックリスト】『いい絵だな』伊野孝行、南伸坊著

2人のイラストレーターが、美術について縦横に語り尽くす、ゆるーい絵画談義。 高橋由一について、なぜ画家たちはリアルに描くことに夢中になったのかと考え、岸田劉生の「デロリ」について、質感へのこだわりを論じる。ヘタな絵の価値とは何か、現代美術は何を言おうとしているのか、岩田専太郎の絵はキライだなど、アートとイラストさらにマンガまでを勝手気ままに語り尽くす。 ここまでが概要。 ここからが感想。 本当に勝手気まま。居酒屋でアートを話の肴にしている風情で、気楽でもあり面白くもある。と

【美術ブックリスト】 ローラ・ペリーマン著、服部こまこ訳『カラーバイブル 世界のアート&デザインに学ぶ色彩の歴史と実例100』

100種類もの色彩の世界を案内するガイドブック。それぞれの色の発祥と歴史を解説した上で、現在のその色の意味や魅力を綴る。 例えば、バーミリオン(朱色)は、硫化水銀を主成分とする無機顔料であり、「辰砂」という天然顔料が起源で、古代ローマでは化粧に使われ、勝利した軍人が凱旋するときに顔にペイントし、中国では朱漆、インドでは新婦の額につける「既婚の印」である。現代ではデザイナーのクリスチャン・ルブタンの赤い靴底に使われている、など。そして図版はアートでの用例として、モンドリアンの

【美術ブックリスト】 佐藤晃子著、伊藤ハムスター(イラスト)『源氏物語 解剖図鑑』

これまで百人一首、国宝、古代エジプトなどをテーマにしてきた「解剖図鑑」シリーズの最新作。源氏物語の世界を図解する。 エピソードごとに見開きで解説している。簡潔な「あらすじ」に、当時の時代状況や習慣、物語の前後とのつながりなどの解説がつく。大きな比重を占めるイラストは、登場人物を犬と猫で表現し、宮中の建物の構造や平安時代の死の観念など物語の背景として知っておくと良いさまざまな知識を図解してくれる。 これだけを読んでも源氏物語が分かるわけではないけども、入門の際の手助けにはな

【美術ブックリスト】佐藤泰生『マスクはおしゃべり』

コロナ禍で風景が変わった。人も変わったし、表情も変わった。著名な洋画家の佐藤さんが、想像のおもむくままにさまざまなマスクをした顔をドローイングで描き、一冊にまとめたもの。 「マスクは隠すものだが、逆に見えてくるものがある」と、画家特有の遊び心で世の中に明るいアートを投げかけます。 80ページ、遊行社、 A5版、1760円

【美術・アート系のブックリスト】杉全美帆子 「イラストで読む 新約聖書の物語と絵画」

イラスト読むシリーズの最新刊。これまでルネサンスの巨匠、印象派の画家といった美術からギリシア神話、旧約聖書とテーマを広げ、今回の新約聖書の刊行となった。 イエス、マリア、使徒たちといった登場人物や受胎告知、復活といった主要なトピックを、イラストとマンガに混じって西洋絵画も登場させて説明していく。 読者を飽きさせない工夫が満載で、かなり自由な作り。聖書の物語についてざっくり知りたい人にはオススメです。 河出書房新社 1837円

【美術・アート系のブックリスト】佐藤優「大人の教養ドリル」

作家で元外務省主任分析官の佐藤優による教養本。大人ノが知っておくべき一般教養を8つのジャンルでドリル形式で指南していく。巻頭は「政治)で、日本国憲法やアメリカの政治制度、イスラム国や中国などを解説。すると2番目には、経済や哲学、文学などを抑えて「美術」が続く。古代ギリシア、ルネサンス 、バロック現代アートなど、かなりざっくりだが一通り問題と解説で紹介している。佐藤さんはプロテスタントのクリスチャンで、西洋美術にも造詣が深い。 深掘りするのではなく、一通り全ジャンルのトピックを

【美術・アート系のブックリスト】けーたろう著、なかい れい画『おばけのマールとモーニングのあとで』中西出版

「おばけのマール」シリーズは、札幌のご当地絵本。円山動物園や雪まつりを舞台に札幌の風物をテーマに展開しています。北海道立三岸好太郎美術館との縁で、今回はじめて北海道を離れて、一宮市三岸節子記念美術館のある愛知が舞台となりました。 愛知といえば喫茶店文化、ということで「モーニング」のあとはどこにいくかがテーマになっています。マールをガイドしてくれるおしゃれなマダムがキーパーソンです。 A4変型判 24頁 定価 1,200円+税

上野 達弘・前田哲男著『著作物の類似性判断: ビジュアルアート編』勁草書房

最近アートにまつわる法律の本も増えてきました。 これは著作権侵害をめぐる紛争でもっとも多い類似性の案件、つまり「盗作」「剽窃」「パクリ」の問題を、法学者と現場の弁護士が研究した本格的な研究書です。 何をもって似ているというのかの法的な考え方がよく分かります。 例えば、「魔法使いの少年が登場するファンタジー小説」という抽象的なアイデアだけでは、それが共通するからといって著作権侵害の議論にはなりません。それが「ハリーポッター」という表現になって初めて、著作権が発生し他の作品と類