マガジンのカバー画像

美術・アート系の本

367
美術に関する新刊・近刊を中心にしたブックレビューです。
運営しているクリエイター

#青幻舎

【美術ブックリスト】 『蘭花譜 京都・大山崎山荘 主の愛した蘭』 加賀正太郎原書監修

ニッカウヰスキーの前身の創設に関与し関西の経済人で、大山崎山荘をつくった加賀正太郎は、蘭の栽培にも情熱を傾けた。加賀が「新版画」の技術で刊行した『蘭花譜』を原本に、全104点を高精細に再現したのが本書。その植物学的、美的な価値に迫る。 青幻舎刊 B5変 168ページ 3000円

【美術ブックリスト】 『池上秀畝 高精細画人』松浦千栄子、加藤陽介、木内真由美著

明治から昭和にかけて日本画の旧派を代表する画家として活躍した池上秀畝(1874~1944) の、生誕150年を記念して練馬区立美術館(会期終了)と長野県立美術館(5月25日~6月30日)で開催されている同名展の公式図録。詳細かつ丁寧な力作。 青幻舎刊 B5判  216ページ 2800円

【美術ブックリスト】 『池田学 The Pen 誕生・その後 増補改訂版』池田学著

【概要】 2013年から3年をかけて、アメリカのチェゼン美術館のアトリエで制作した大作《誕生》は2017年に日本を巡回。公式カタログに解説をつけ緊急刊行された『《誕生》が誕生するまで』を合体させ、さらに新作とエッセイを加えた増補版。 【感想】 池田学作品にはファンが多いけど、それはあの途方もない作業量への敬意と圧倒的な凝集性だろう。古典的な概念でいう「崇高」のひとつの現れだと思う。 青幻舎 A3変 192ページ 5500円

【美術ブックリスト】 『金子富之画文集 幻成礼讃』金子富之著

【概要】 幼少期から異界の存在を感じ、現在は異界と共生するかのように山形の限界集落に暮らす画家・金子富之。10代からの心象を描いたノート、自選作品200点、さらに全篇書き下ろしテキストで構成する画文集。神・仏・精霊・妖怪・悪魔・幽霊が次々登場!! 【感想】 東北芸術工科大学からは、日本古来の伝承や文化、土着性を土台とした作品を発表する優れた才能が輩出されている。金子富之もそうした画家の一人で、日本橋髙島屋のギャラリーXでの大作展示は圧巻だった。 土着的というか、大地的なそ

【西村の勝手にアートブック・オブ・ザ・イヤー2023】

今年出版された美術系の書籍のなかから、西村が勝手にベスト1を決定します。月刊美術の新刊情報コーナーで今年紹介したおよそ130冊の候補から選びました。リンクはnoteに書いた私の紹介文です。 ■日本のアートブック部門 ベスト1■ 残念ながら該当なし ■日本のアートブック部門 次点(2冊)■ 『沖縄美術論 境界の表現 1872―2022』 翁長直樹 著(314ページ 四六判 2700円+税 沖縄タイムス社) 1872年の日本政府による琉球藩設置から現在までの沖縄の美術の通史と作

【美術ブックリスト】『星野画廊50年史 明治・大正・昭和 発掘された画家と作品』星野画廊編

京都の星野画廊といえば、無名作家や歴史に埋もれた作家に光を当てることで知られる異色の画廊。 知名度に関わりなく、埋もれた作家を発掘し、石を磨くように作品の真価を見極めて紹介してきた。秦テルヲ、甲斐荘楠音、不染鉄といった画家が世に知られるようになったのは、星野さんの力が大きい。創業以来の160回に上る展覧会の記録を収録。会場の展示風景、案内状、雑誌や新聞の掲載記事など圧倒的な数の図版と解説文で50年を振り返る。 「発掘された珠玉の名品 少女たち —夢と希望・そのはざまで 星野

【美術ブックリスト】『マグリット400』ジュリー・ワセージュ著

著者は美術史家、キュレーターでブリュッセルのマグリット美術館に在籍する。 生涯に残した作品の中から、研究者である著者が400点を選んで収録した作品集。 その生涯を7つの時代に分けて、時代を追って作品を追う。各章のはじめにその時代のマグリットの状況を記していて、伝記としても読める。 キュビスムや抽象絵画の影響が見られる初期から、次第に独自のシュールな画風へと変遷し、それと同時に描写が写実的になっていく様子がよくわかる。 ここまでが概要。 ここからが感想。 言葉のような意味