マガジンのカバー画像

美術・アート系の本

367
美術に関する新刊・近刊を中心にしたブックレビューです。
運営しているクリエイター

#教養

【美術ブックリスト】 『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』レジー著

【概要】 音楽ライターの著者が、「教養を身につけてビジネスを乗り越えよう」「ビジネス教養としての〇〇」などと謳われるときの、新しい意味での教養をファスト教養と名付けて、その功罪と背景を分析している。現代の教養は、「ビジネスで勝つため」「周囲を出し抜くため」に、「コスパ重視」で身につけるざっくりとしたインスタントな知識となっていることを、中田敦彦、ホリエモン、勝間和代といった具体的な人名や書名をあげて解説。その背景には、成功しなければ時代に淘汰されてしまうという不安があること、

【美術ブックリスト】『50の傑作絵画で見る 聖書の世界』ジェラール・ドゥニゾ 著

聖書の50のエピソードから伝説的な物語を読みなおすとともに、美術史に残る見事な絵画を味わえる。「十字架にかけられたイエス・キリストの下にいる人物は?」「最後の晩餐を描いた絵で、イエスを裏切った弟子のユダはどこにいる?」などキリスト教絵画を一歩踏み込んで理解できる。 ここまでが概要。 ここからが感想。 本書は大きな判型で作品を見やすく掲載。細部についての解説も細かい。「プレゼントに最適」とのコピーがついているとおり、本棚にあるとちょっと箔がつくかんじもする。 【余談】 Yo

【美術・アート系のブックリスト】 小針 由紀隆『サルヴァトール・ローザ—17世紀イタリアの美術家が追い求めた自由と名声』

サルヴァトール・ローザは、17世紀イタリアの風景画家。 こう書いても日本人にはあまりビンとこないかもしれないが、「風景画家」と呼ばれることは、当時の画家にとってはある意味屈辱的だったかもしれない。というのも、絵画ジャンルにはヒエラルキーがあり、神話画や歴史画といった上位ジャンルに対して、風景画や戦闘画は下位に置かれ、実際ローザは神話画なども描いていたにもかかわらず、風景画でしか評価されずに憤っていたとされる。  またパトロンに依存する伝統にも反発し、注文ではなく展覧会で発

【美術・アート系のブックリスト】高山百合「近代日本洋画史再考──「官展アカデミズム」の成立と展開」

官展とは、官設展覧会のことで、明治40年を第一回とする文展(文部省美術展覧会)を原点に、そののち帝展、新文展、日展と名称を変えていった日本特有の展覧会のこと。日展は昭和33年に完全に民営化されるので、厳密には日展も入るのだが、一般には戦前の日展以前の官展を指す。  本書はその成立と展開を追いながら、「官展アカデミズム」と呼ばれる穏健な写実表現の意義と評価の変遷についても言及していく。とはいえ厖大な展覧会の回数、厖大な画家、厖大な作品を対象とすることはできない。そこで著者は、

【美術・アート系のブックリスト】杉全美帆子 「イラストで読む 新約聖書の物語と絵画」

イラスト読むシリーズの最新刊。これまでルネサンスの巨匠、印象派の画家といった美術からギリシア神話、旧約聖書とテーマを広げ、今回の新約聖書の刊行となった。 イエス、マリア、使徒たちといった登場人物や受胎告知、復活といった主要なトピックを、イラストとマンガに混じって西洋絵画も登場させて説明していく。 読者を飽きさせない工夫が満載で、かなり自由な作り。聖書の物語についてざっくり知りたい人にはオススメです。 河出書房新社 1837円

【美術・アート系のブックリスト】佐藤優「大人の教養ドリル」

作家で元外務省主任分析官の佐藤優による教養本。大人ノが知っておくべき一般教養を8つのジャンルでドリル形式で指南していく。巻頭は「政治)で、日本国憲法やアメリカの政治制度、イスラム国や中国などを解説。すると2番目には、経済や哲学、文学などを抑えて「美術」が続く。古代ギリシア、ルネサンス 、バロック現代アートなど、かなりざっくりだが一通り問題と解説で紹介している。佐藤さんはプロテスタントのクリスチャンで、西洋美術にも造詣が深い。 深掘りするのではなく、一通り全ジャンルのトピックを