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美術・アート系の本

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美術に関する新刊・近刊を中心にしたブックレビューです。
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2023年1月の記事一覧

小学生のための「日本の名画」がわかる本 (まなぶっく) | 「日本の名画がわかる本」編集室

飛鳥時代の《法隆寺金堂壁画》から平安時代の《源氏物語絵巻》、室町時代の禅画《瓢鮎図》、江戸の浮世絵や若冲の作品、最後は大正の竹久夢二、昭和の岸田劉生《麗子像》まで、時代を追って日本美術の名品を辿っていく。1つの作品を見開き2ページに掲載。全体図、部分図、イラスト付きのコラムなどをコンパクトに収めていて、読みやすい。 ここまでが概要。 こからが感想。 2018年出版の『小学生のための「世界の名画」がわかる本』(レブン著)の続編。日本史の教科書で見たことのある有名な作品をピック

【美術ブックリスト】『超絶技巧の西洋美術史』池上英洋、青野尚子

ルネサンスから近代までの西洋絵画の中から、細密描写、だまし絵、遠近法などの特殊技法など、さまざまな方法で描かれた眼を見張る超絶技巧の作品を集める。ヤン・ファン・エイク、ハンス・ホルバイン、ベッリーニ、アングルといった巨匠の作品が巻頭を飾り、カラヴァッジオの静物、ブグローの人体表現など、著名作品を次々と挙げてそのリアルな描写に言及していく。 ひとつの作品を部分拡大図を駆使して詳しい解説を重ねる。50あまりの作品を収録している。 ここまでが概要。 ここからが感想。 まず印刷が綺

【美術ブックリスト】『時の余白に 続々』芥川喜好

2006年春から読売新聞でスタートした同名の連載エッセイをまとめた書籍の3冊目。連載は2020年に惜しまれながら終了。絵画、彫刻、文学など美を手がかりに、人間とは、豊かさとはを問いかけた。 本書は連載最後の3年に加えて、寄稿や講演録などを収載。 熊谷守一、浜田知明、堀越千秋といった昭和期の画家が話題となっている。人気作家たちではなく、孤高と呼ばれたり世間に迎合せず画壇にも属さなかった人たちとの記憶を、非常に落ち着いた日本語で淡々と記していく。 ここまでが概要。 ここからが

【美術ブックリスト】『ギャラリーストーカー 美術業界を蝕む女性差別と性被害』 猪谷千香

2017年から弁護士ドットコムニュース編集部で記事を執筆してきた著者が、女性作家につきまとうギャラリーストーカーの存在を知り、実際に被害にあった作家に取材を重ねたルポルタージュ。 画廊に長く居座る、二人きりになろうとする、食事やドライブに誘う、家やアトリエの住所を聞いてくる、などその手口と被害は多様で、しかも加害者が迷惑行為をしている意識がなく「善意」でやっている。さらにそうした人たちが取り締まられることなく野放しになっている現状など他の分野のストーキングとは違う美術分野の特

【美術ブックリスト】『コンテンポラリーアートライティングの技術』 ギルダ・ウイリアムズ著、GOTO LAB(京都造形芸術大学)監修

編集者でもあり、大学でも教えるイギリスの女性美術評論家の著者が2014年に出版した『How to Write About Contemporary Art』を、後藤繁雄のチームが翻訳し2020年に刊行した翻訳書。 第1章はコンテンポラリーアートについて書くことの役割。第2章は実践的な書き方。第3章は論文、雑誌記事、リリース、アーティストステートメントといった形式別の書き方の秘訣となっている。 何を、どう書くか。書く人の立場によって文の意味合いが異なること、それが論文なのか

【美術ブックリスト】『禅の教室 坐禅でつかむ仏教の真髄』 藤田一照、伊藤比呂美

2016年の出版。 藤田は東京大学大学院教育学研究科博士課程を中途退学した曹洞宗僧侶。87年渡米してアメリカ人に禅の指導をしていた。2005年に帰国してからは曹洞宗国際センター所長として禅の普及活動をしている。 伊藤は現代詩の詩人。女の性を歌ったかなり過激な詩を書く人だったが、『日本霊異記』の現代語訳など仏教に関わる仕事もしている。 本書は伊藤が素人を代表して、僧侶である藤田に、仏とは、仏教とは、禅とは、坐禅とは、と専門用語を使わないで説明を求めていく三日間に渡る対談を収録し

【美術ブックリスト】『マイ仏教』みうらじゅん

2011年の出版。 イラストレーターでタレントの著者が、「仏教が永遠のマイブーム」とばかりに幼少期の仏像への興味から始まった現在までの仏教体験や歴史観、地獄ブームから煩悩との付き合い方までを縦横に吐露する自伝的仏教入門。 「見仏」「後ろメタファー」「イマ寺院」「比較三原則」「空あります」「僕滅運動」など、ダジャレを利かせた独特の用語を用いて、楽しく仏教と戯れつつ、大乗仏教の真髄に触れていく。 ここまでが概要。 ここからが感想。 「美術ブックリスト」といいつつ、ここのところ美