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美術・アート系の本

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美術に関する新刊・近刊を中心にしたブックレビューです。
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2022年11月の記事一覧

【美術ブックリスト】『韓国近代美術研究―植民地期「朝鮮美術展覧会」にみる異文化支配と文化表象』金惠信

2005年に刊行された韓国の植民地時代の美術に関する研究。「朝鮮美術展覧会」(鮮展)について、その日本の植民地支配の影響を表象分析する。その際、ジェンダーの視座で、描かれたモチーフを分類していく。 第1章は西洋絵画が韓国にどのように導入されたか。第2章は、韓国併合によって日本の統治が始まり、文化政策の1つとして日本の官展である文展に倣って朝鮮美術展覧会が開設され、それがどのように運営されていったか。第3章では朝鮮美術展覧会でどのような作品が評価されたかを検証。支配と被支配の

【美術ブックリスト】『絵が上手いより大事なこと』永山裕子

画家・永山裕子による書き下ろしの指南書。 「絵画教室に通うメリットは?」「どんな体勢で描いていますか?」「絵のサイズはどうして決めていますか」「行き詰まったときはどうしてますか?」「絵にメッセージ性は必要ですか?」など、学び方から技法的、技術的な疑問、描くときの心理など68の質問に、自身の体験や具体的なエピソードで答えていく。 観念も理屈もなく、生きてきたなかで身につけたことを言葉にする。 図版も120点と豊富で、回答に対する具体例になっている場合がほとんど。アトリエの風景や

【美術ブックリスト】『The Art World Demystified』Brainard Carey 著

タイトルを訳すと『アートの世界の謎を解く』。 副題は「How Artists Define and Achieve Their Goals(アーティストはいかにして目標を設定し達成するか)」。 著者自身が現代アーティストであり、これまでにもアーティスト向けに『アートの世界で成功する』『SNSでうまくいく』『ネットで売ろう』といった指南書を執筆している(全部英語)。 本書は、謎めいたアートの世界を解き明かすのがテーマ。著者自身の体験と考察に加え、さまざまなインタビューで構成

【美術ブックリスト】『げいさい』会田誠

現代美術家の著者が、2020年に「文学界」に3回に渡って短期集中連載し、同年出版された小説。佐渡から上京して美大受験を目指していた2浪目の年、予備校の友達を訪ねた多摩美術大学の芸術祭「芸祭」の一晩の出来事を中心に、そこからさかのぼるかたちで現役の年の東京芸大の受験、浪人1年目の日々を経て二度目の東京芸大受験が描かれる。私小説のようだが、それが体裁だけなのかフィクションなのかは判然としない。 ここまでが概要。 ここからが感想。 美大受験も、予備校の授業も、美術大学の実際も私自

【美術ブックリスト】『美術家たちの学生時代』㓛刀知子

現在活躍する日本画、洋画、彫刻、現代美術のアーティストのインタビュー集。学生時代をメインに聞いている。多くは美大の思い出だが、中学、高校の話もあったり、海外留学した際の体験談もある。 2021年から2022年まで、つまりコロナ禍の間に取材していて、オンラインでのリモートインタビューと対面インタビューが混じっている。 芸術新聞社のウェブサイト「art access」に全文が載っているので、ウェブ連載だったかもしれないが、未確認。 ここまでが概要。 ここからが感想。 美術家にな