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美術・アート系の本

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美術に関する新刊・近刊を中心にしたブックレビューです。
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2022年10月の記事一覧

【美術ブックリスト】『366日の西洋美術 人物画編』瀧澤秀保監修

366日の教養シリーズの一冊。 西洋絵画の人物画を1日1作品ずつ鑑賞する日めくり的に読める。解説文は歴史、描かれた人物、物語、技法、人間関係、市井の人々、ファッションといった7つのテーマに沿っている 。 描かれた人物をさまざまな角度から掘り下げることで、自然と美術の見方がわかり、歴史も身に付く。 ここまでが概要。 ここからが感想。 誰もが見たことのある名画から、はじめて見るものまでいろいろあって飽きない。そのかわり数が多すぎて、どの作品のことだったか覚えていられない。よって

【美術ブックリスト】『いい絵だな』伊野孝行、南伸坊著

2人のイラストレーターが、美術について縦横に語り尽くす、ゆるーい絵画談義。 高橋由一について、なぜ画家たちはリアルに描くことに夢中になったのかと考え、岸田劉生の「デロリ」について、質感へのこだわりを論じる。ヘタな絵の価値とは何か、現代美術は何を言おうとしているのか、岩田専太郎の絵はキライだなど、アートとイラストさらにマンガまでを勝手気ままに語り尽くす。 ここまでが概要。 ここからが感想。 本当に勝手気まま。居酒屋でアートを話の肴にしている風情で、気楽でもあり面白くもある。と

【美術ブックリスト】『至高の名陶を訪ねる 陶芸の美』小林真理著

日本が誇る陶芸。その現在地点を、巨匠から若手まで陶芸家50人を実際に工房を訪ねて、レポート。作品写真と陶芸に対する作者の思いをつぶさに紹介していく。作家名鑑でもあり、作品集でもあり、現代の陶芸事典のような本。 堅苦しい制作論や作家論ではなく、作り手のふと漏らした言葉を拾い、そこから作品の魅力にまで広げる。ここまでが概要。 ここからが感想。 著者は工芸など手仕事に関して執筆、講演活動をされている方らしい。この文も雑誌のインタビュー記事のようで読みやすい。 一般的に陶芸全般

【美術ブックリスト】 『キリスト教美術史-東方正教会とカトリックの二大潮流』瀧口美香著

 西洋美術史を学ぶとなると、大抵はギリシア・ローマの古代美術と中世のロマネスクとゴシックのキリスト教美術を前史として、ルネサンスからバロック、ロココ、古典派、ロマン派、印象派、表現派、現代という歴史が語られる。そしてそのほとんどがキリスト教をモチーフにしているか、キリスト教的な世界観や信仰を前提にしているとされる。  著者はそれはローマン・カトリック美術という、キリスト教美術全体の半分しかなしていないという。残された半分とは、東方正教会に引きつがれているギリシア・ビザンティ

【美術ブックリスト】『芸術学部 中高生のための学部選びガイド 』浅野恵子著

中高生のための大学学部案内シリーズの一冊。「芸術学部」はもちろん、美術学部、音楽学部、表現学部など、さまざまな呼称のある芸術系の学部全般について、何が学べるか、どんなコースに分かれているかなどをガイドしてある。金沢美術工芸大学出身で、武蔵野美術大学教授の岩田壮平さんのほか、音楽、写真、映像などの大学の先生のインタビューもあって、初学者にわかりやすい。 ここまでが概要。 ここからが感想。 一般に学問は人文科学、自然科学、社会科学の3つに分かれるのだけど、それらを統合する分野の

【美術ブックリスト】「上村松園随筆集』

近代日本画、特に美人画の大家として知られる上村松園による随筆集。鏑木清方、井上靖、与謝野晶子といった同時代人が松園との交流や作品に関して書いた評文も収録している。 美人について、線についてなど、画業に関わった話題をとても平易に、しかも率直に書いていて曖昧なところが全くない。 ここまでが概要。 ここからが感想。 本当に難しい言葉が一切でてこない。驚くほど文章がわかりやすい。時々、技法的な話題があるけども、それでも絵描きでなければわからないというものではない。随筆というか、日記

【美術ブックリスト】『世界史で読み解く名画の秘密』内藤博文著

ジョットとイタリア都市国家、ラファエロと教皇たち、ミケランジェロと反宗教改革、レンブラントとオランダ海上帝国など、誰もが知る画家と当時の歴史状況あるいは歴史上の人物との関係を解説していく。ルネサンスがほとんどだが、ゴーギャンと帝国主義、ピカソと世界大戦など近代までカバーしている。 ここまでが概要。 ここからが感想。著者は1961年生まれの歴史ライター。私より10歳ほど上の割には、言葉が古いというか、あまり使われない言葉が散見される。「奸雄」(かんゆう. 悪知恵を働かせて英雄

【美術ブックリスト】『物語で読む国宝の謎100』かみゆ歴史編集部

国宝といっても絵画、彫刻、工芸、歴史的資料、建造物など多岐にわたり、現在のところ1131件もの登録がある。という。その国宝にまつわるウンチクを100問のQ&A方式で解説したもの。第1章「知っておきたい国宝の基礎知識」は、重要文化財や重要美術品とどう違うか、国宝は誰が決めているのかなどの基本を教えてくれて勉強になる。第2章から個々の美術品や建造物についての、知っていると話しのネタにはなる小噺が続く。 ここまでが概要。 ここからが感想。 「物語で読む」「ドラマがある」という割に