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美術・アート系の本

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美術に関する新刊・近刊を中心にしたブックレビューです。
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2022年9月の記事一覧

【美術ブックリスト】 『アーティストになる基礎知識』(BT BOOKS)

ネットの古い記事を見ていたら、美術手帖で以前「アーティストになる基礎知識」という特集を何度かやっていたと知った。 これはその2回分を合わせて再編集したらしい。 ざっと内容はというと、村上隆とカイカイキキに取材して、そこでどんな「修業」をしているか、初個展までに何をしているかを解説。次に小山富美夫さんがアーティストの自己プロデュースの必要性を説く。プレゼンの道具としてポートフォリオとDMを簡単に解説。コンクールやコンペの受賞者に受賞理由を聞く。審査の様子をレポート。小沢剛、曽

【美術ブックリスト】『図説 セザンヌ「サント=ヴィクトワール山」の世界』工藤弘二著

セザンヌがライフワークとして終生描き続けた故郷の象徴《サント=ヴィクトワール山》。制作の歩みと背景、見どころを徹底解説。パリとプロヴァンスの風景画とも対比しつつ油彩画、水彩画など全83点を収録。いわば「まるごと一冊サント=ヴィクトワール山」ともいうべき永久保存版。 ここまでが概要。 ここからが感想。 文字と図版のバランスがいいので、見ていて楽しい。美術史を学ぶと、ある作品を論じるのに同じ画家の別作品を参照して比較する必要がある。こうして同じモチーフを網羅してあると、初学者に

【美術ブックリスト】『アートとしての論述入門』大辻都、篠原学著

京都造形芸術大学(現、京都芸術大学)と東北芸術工科大学が運営する芸術学舎が刊行。主に通信制に通う学生に向けて、レポートや論文を書く技術をまとめたもの。教科書として使われているらしい。 まず大辻によって、論文とは何か、どういう目的で、何に留意して書くものかが語られる。そのあと篠原が、例文を挙げながら、テーマの決め方、構成の組み立て方、引用の仕方などを解説する。「芸術と生活」というテーマで論じなさい、というテーマで課された1600字の論述課題では、論点を整理し、補強していく実例が