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美術・アート系の本

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美術に関する新刊・近刊を中心にしたブックレビューです。
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2022年3月の記事一覧

【美術ブックリスト】 シルヴァン・バーネット『美術を書く』

1981年にアメリカで初版が刊行された「A Short Guide to Writing About Art」の2003年の第7版の邦訳。現在では11版が出ているというから、アメリカではよほど定番の文章読本になっているのだろう。 内容は、美術史を学ぶ学生が研究論文を書くための指南書である。作品の分析の方法、絵画や彫刻や写真といった媒体ごとの取り組み方や比較。肖像画、静物画、風景画といったジャンルごとのテーマの見つけ方。展覧会評の書き方、ジェンダー論や伝記的研究やイコノグラフ

【美術ブックリスト】佐藤公一 『ゴッホを考えるヒント―小林秀雄「ゴッホの手紙」にならって』

画家のゴッホは数多くの手紙を残していて、日本では『ファン・ゴッホ書簡全集』全六巻(みすず書房)にまとめられている。またこの手紙について、文芸評論家の小林秀雄は『ゴッホの手紙』を書いた。いまでも新潮文庫で読める。 本書は小林秀雄がしたように、ゴッホが残した手紙からその生活や思考を推測、推論したもの。ここまでが概要。 ここから感想。おそらくゴッホが書き残した言葉から、彼のさまざまな側面を、画家としてだけでなく兄として、家庭人として、生活破綻者としてといった具合に光を当てたいの

【美術ブックリスト】らちまゆみ『大人の雑学 西洋画家事典 - 人柄がわかるエピソードで楽しく読める!』

著者はどうやらラジオでアートを語る番組のナビゲーターとのこと。美術や画家にまつわるエピソードを解説しているようです。Youtubeでも配信しているとのことで2本ほどみたのですが、美術系ユーチューバーには珍しい若い女性でした。 さて本書はラジオで語ってきた内容の書籍化。ボッティチェリ、カラヴァッジオ、ピカソなど有名どころの歴史上の画家を時代を追って解説していきます。美術的な内容よりも、人柄や生き様にフォーカスしているところが他との違いといえば違いです。35人の画家を紹介してい