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美術・アート系の本

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美術に関する新刊・近刊を中心にしたブックレビューです。
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2021年10月の記事一覧

【美術・アート系のブックリスト】杉全美帆子 「イラストで読む 新約聖書の物語と絵画」

イラスト読むシリーズの最新刊。これまでルネサンスの巨匠、印象派の画家といった美術からギリシア神話、旧約聖書とテーマを広げ、今回の新約聖書の刊行となった。 イエス、マリア、使徒たちといった登場人物や受胎告知、復活といった主要なトピックを、イラストとマンガに混じって西洋絵画も登場させて説明していく。 読者を飽きさせない工夫が満載で、かなり自由な作り。聖書の物語についてざっくり知りたい人にはオススメです。 河出書房新社 1837円

【美術・アート系のブックリスト】佐藤優「大人の教養ドリル」

作家で元外務省主任分析官の佐藤優による教養本。大人ノが知っておくべき一般教養を8つのジャンルでドリル形式で指南していく。巻頭は「政治)で、日本国憲法やアメリカの政治制度、イスラム国や中国などを解説。すると2番目には、経済や哲学、文学などを抑えて「美術」が続く。古代ギリシア、ルネサンス 、バロック現代アートなど、かなりざっくりだが一通り問題と解説で紹介している。佐藤さんはプロテスタントのクリスチャンで、西洋美術にも造詣が深い。 深掘りするのではなく、一通り全ジャンルのトピックを

【美術・アート系のブックリスト】いとはる著『世界一わかりやすい美術鑑賞ドリル』

たとえばマネの《笛吹く少年》であれば、主人公がたった一人描かれた少年であることはみただけでわかるけれども、ドラクロアの《民衆を導く「自由」》では、複数の人物画描かれているため誰が主役かは一見してはわかりません。そこでどうすれば主役がわかるかと言えば、「ピントがあっている人物」という理由で、旗をもった中央の女性であることがわかります。 同様に光が当たっている、周囲の人物の視線が集中しているなど、仮に歴史や美術史の知識がなくても、ある程度は絵画内の情報でその作品の意味がわかる、

【美術・アート系のブックリスト】 石川九楊著『思想をよむ、人をよむ、時代をよむ。:書ほどやさしいものはない』

著名な書家が、文字を手がかりにその人物の思想や生きた時代を読み解く哲学的エッセイ。王羲之、西郷隆盛、大塩平八郎、岡本かの子らの文字を分析・解説していく。 「近年、日本語があきれるほど粗末に扱われている」で始まるあとがきに、書くことが思考そのものであるという著者の文字観が端的に表れている。書に関心はなくても、言葉を生業にする人は読むと背筋が伸びます。 ミネルヴァ書房刊 四六判 322ページ 2500円 https://amzn.to/3FUrDUn

【美術・アート系のブックリスト】 山内舞子監修『教養として知っておきたい 名画BEST100』

誰もが知っている名画、どこかで見たことのある名も知らぬ絵、有名らしいけど詳しくは知らない教科書に載っている絵画などを解説する美術案内本。有名な順にランキング形式で紹介していくところがミソ。 《モナ・リザ》を2位に抑えて1番を飾るのはボッティチェリの《ヴィーナスの誕生》!! 永岡書店刊 A5判 192ページ 1500円 https://amzn.to/3BV7tHq

【美術・アート系のブックリスト】川内有緒著「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」

 白鳥さんは50歳代の全盲の男性。年に何十回も美術館に通い、水戸芸術館現代美術センターなどで講演やワークショップもナビゲートも行います。  本書はノンフィクション作家の著者が、友人から「白鳥さんと作品を見ると楽しいよ!」と誘われ、一緒にアートを巡ったルポルタージュ。ピカソやモネの絵画、仏像、日本人の現代美術などを前に、作品に何が描かれているかを白鳥さんに説明していくなかで、それまで見えていなかったことに気付かされていく。  他者と一緒に作品を見ること、会話しながら見ること