2019.9.15

‪アスファルトにのさばった雪解けが空中にばら撒かれ 街灯を肯定している 月光を喰らい尽くした大粒の牡丹雪は重力を馬鹿にして安らかに眠っているようです

優しい目で偽物の愛を確かめている。傷つくのに欲しがるのはその絵が、うたが、痛みに似ているから。そう信じているから。 追うのに疲れた貴方がすぐ隣の安い幸せを選んでしまっても。貴方の信じた定義は、叫びたかった定義は、止まることなくその速度を保ち、枯野を遠く離れていくばかりです。孤独なカテゴリーをいつまでも追いかけて。どうかひとりにしないで。自分に酔うことを怖がった貴方が、私を飲んでは幸せになる。それもマボロシ。まほろばはもはや死であると。いつまでも虚無を被って笑っていましょうか。

輪郭を、存在を、確かめるように、ゆっくりと瞬きを繰り返す。優しい人。臆病な体温が、何度も何度も口を吸って確かめている。光の入らない目にうつる虚像を、愛しいと思えますか。空っぽを愛した貴方がいつまでも孤独でありますように。側にいてくれますように。それが例え無意識下の愛だとしても、言葉の皮を大切に撫で続けてくれますように。

都合のいい角度で私を切り取って。枯れてしまうまで好きでいてね。ムラサキの痣が咲き次第に剥がれ落ちるのを貴方の目がいつまでも忘れませんように。貴方がいつまでもそれを花だと信じてくれますように。中心で黒く膝を抱えたまま私はいつしか自分の名前を捨ててしまった。

美しいということが、花たる所以であるならば。

悲しい程の矜恃です。美しくあろうと、花として生まれ花として死のうと、暴徒化した魂が内側を這いずり回って帯化する。私を花と呼んでくれますか。貴方は。貴方だけは。私を花と呼んでくれるでしょうか。

絵も、詩も、心ある無言の抱擁に、勝てない。結局。体から切り離す作業で生じた僅かなズレによって、人間との間に見えない壁を作っている。それでも。心の前に倒れ伏しても、それでもかくのは、我々が絵を、詩を、愛しているから。かくことは、抱擁。内側から抱きしめる抱擁。例えその向こうがなかろうと、それ以外の接し方が何もない恋を、もう何年も続けて生きています。

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