2020.6.23 吸い葛

当たり障りの無い傷を庇ったばかりに破けた日々のその隙間に咲いた忍冬の花をいつまでも吸っては咽せている

私達の間にはいつもくだらない「ごめんね」ばかりが浮かんでいて、そのために、おひさまの光はもう何年も届いていません

並べた二つの小さな白い花がいつか、おひさまの色に濡れ、渇くことのないこれからを約束した時、私達はきっと幸せだったことでしょう

私の身体からは、もう、随分と昔から、黒真珠が、泡のように湧き出て、痛むんです  指を滑らせて  実の無い音が静かに鳴るとまた、次から次へと新しい黒真珠が湧き出て、それは瑞々しく光るものですから、変な心地がして、私なんかはもう、泣いてしまえるような気もするのだけど、それはとうとう叶わなかった

不規則に生まれる桃源郷へ、置き忘れたきり全ての思い出は、人知れずいつまでも静かに煌めいている

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