2022.4.2 日記

鬱病になってから、というよりも脳薬を飲み始めてから本当に感情の起伏というものが無くなり、それがとても悲しくて(本当をいうと悲しさすらもないのだけれど、それはとても悲しいことだと思うので)眠ってばかりいた。

とはいえ気持ちは焦る。Twitterで絵の上手い人を見たり、誰かが文学の賞を取ったり、またミスiDの新世代が生まれたりしているのを確認すると、何か私もやらなければと思うだけ思う。思うだけ。

私はかなり倹約家で貧乏性なので、娯楽にお金を使ったり仕事に必要な投資をしたりということをほとんどしない。ので、仕事を転々としたり、無職の期間が何度かあって、今もそうだとはいえ、まとまった貯金が少しある。今こそそれを使って、感情を取り戻す時なのではないか。会いたい人に会ったり、知らない土地を知る時なのではないか。

大阪でトークイベントをした時。岡山から案外新幹線でビュンと大阪まで辿り着いてしまえることが分かり、県を跨ぐ移動へのハードルが下がった。これまで自分の出るイベント以外で全くといっていいほど旅行というものをしたことがなかったので、この発見を機に色々行ってみたいという気持ちになってきた。とはいえ、何か約束事がないと私は動けない。行かなければ人に迷惑がかかってしまう状況をつくらないと動けない。(だから、イベント出演は都合がいい。)ので、突発的に友人と会う予定をつくり、次の日関東方面へ移動した。連日不眠だったけど、気持ちは安定していた。

大阪までは本当にかなり早く感じるのだけれど、関東まではすごく退屈に感じた。眠れたらよかったものの、眠ることもできず、ただ音楽を聞いたり煙草を吸ったりしながら移動した。主にYUKIの音楽を聞いた。YUKIの音楽は、無いはずの思い出が思い起こされるものが多く、不思議な気持ちになる。

お昼頃には岡山を出たのに、目的地に着いた頃にはもう夜だった。友人と久々に会い、知らないカラオケ屋さんで知っている歌を歌ったり、Twitterの話をしたり、煙草を吸ったりした。「百代の過客」と書かれた橋があり、少しは自分も旅をしていると思っていいのかな、と許された気になった。桜がたくさん咲いていた。今年の春、はじめて桜をみた。ただただ綺麗だった。知らない自販機で「アイスクリーム入り」と書かれたメロンクリームソーダを買って飲んだ。もちろんアイスクリームは入っていなかったけれど、すごく美味しかった。

特に予定はなかったけれど、せっかくなので講談社へ行きたいとツイートしてみたら、連絡を頂いたので、講談社へ向かう。東京に来てもTwitterばかりしているので、集中していたら護国寺の駅を通り過ぎてしまった。護国寺の駅から講談社までは直に行けるが、なんとなく入りづらい雰囲気だったので正面から入った。久々に小林さんに会う。忙しい時期なので本当はとても疲れているだろうに、快く予定を入れてくださって有難い。何人かの方に会い、仕事の話をする。少人数とはいえ、複数の人と話し合う機会は仕事を辞めてから一度もなかったので、新鮮だった。楽しく話をして、宿題を出してもらい、講談社を出る。やらなければいけないことを作ってもらえるのは本当に有難い。締め切りに追われないと何もできないので。あまり得意ではない内容の仕事だけれど、頑張ってみようと思う。

もう一人友人に会う。「踏み切りを渡って、桜がたくさん咲いている方にいます」という、美しい待ち合わせをした。本当に桜は沢山咲いていた。丘を登って、桜を見ながら喫煙をした。鳥が鳴いていて、雲が穏やかで、はじめて春を受け入れることができた。来てよかった。春を好きになりました。

詩や音楽の話をした。時が止まったように話をして、気がついたら帰る時間だった。アラームをかけておいてよかった。いくつか本をお薦めしてもらって、その場でポチった。「なんだか分からないけれど、心のどこかをグッとされるような感覚になる」のが、詩と音楽の似ているところであり、そう思わせる作品がつくれたらどんなにいいか、と思う。詩を読みながら、「あ〜」とか「これだよ!」とか言っていたら百億年くらいの時が流れていた。あの時間は本当に閉鎖的で尊いものだった。透明で割れないシャボン玉の中に切り取られて、時間を失ったままいつまでも笑っているような感覚だった。(後で時計を見て浦島太郎みたいになった。)目をつむって吹奏楽曲や神聖かまってちゃん、久石譲などを聞いた。やはり「あ〜」とか「これなんですよね」とかばかり言っていた。それでいいんだと思う。友達と、「こころがグッとなる」を共有する時間を過ごせて本当によかった。グットグットグット。

帰ってからは連日の不眠が嘘のように、死んだように眠れた。まだまだ会いたい人はいたけれど、何日も旅先に滞在するにはやはりまだ貧乏性が邪魔をしてしまうので、このくらいが限界だった。次はまたイベントのある5月に関東へ向かう。友達が集まるようなので、とても楽しみです。この旅で得たきもちが消えないうちに、新刊をつくったり宿題をしたりを頑張ろうと思う。

以上。


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