2019.7.20

今年の夏は涼しすぎるが、夏を全身で感じながら一人きりで歩くのが本当に馬鹿みてーに気持ちよくてたまらず泣きたくなっちゃうな。これから祭に向かう恋人たちや家族連れを掻き分けてきったねえ仕事着を着たまま逆走する。ジャージの中で濡れていく肌からめちゃくちゃ気持ちのいい不快感を獲る。向かい風だいつもこんな時は。電車の跳ねた石ころがぶち当たって死ぬかもな。今ここで不細工な顔面もぐちゃぐちゃになるかもな。知らない花と、知ってる草が、昨日降った雨に濡れたままの水溜りへ覆い被さっている。誰のことも知らないからおでこを丸出しにして、風とだけ睨み合いながらいつもよりゆっくりゆっくりゆっくり歩く。汚ねえ。わたしは汚ねえ。あまりにも綺麗すぎるんだ夏が。不法投棄された炊飯器も、ポケットから逃げ出した包装紙も、全て馬鹿にして腐らせるだけの夏が。愛し合う季節かよこれが。死んじまいたい。死んじまいたい。縁側に投げられた麦わら帽子の影に、消えてしまったこどもの笑う声がする。

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