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ワヒロ二次小説

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不定期更新。Twitterなどで公開したものをまとめていく予定です。
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2022年8月の記事一覧

夜明けの先を【#第67回whrワンドロ・ワンライ】

 草木も眠る丑三つ時。……って言うんだっけ? 正確な時刻としては午前二時からしばらくの間。俺とユウナギは七見の計画の一端として、ALIVE本部の見張り番をしていた。

 計画といってもまだ七見も俺たちも動き始めたばかり。コールドスリープから目覚めたての身体は未だ本調子ではない。そんな状態で敵の本拠地に乗り込むのは得策とはいえない……ってんで、今夜は大人しく監視に徹していろ、とのお達しだった。

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折り目の役目【#第63回whrワンドロ・ワンライ】

「はーあ。流石にこの量のプリントを終わらせろってのは無理難題じゃない? 解いた傍から増えてく心地だよ」
「……? 倫理のプリントは別に増えたりしてない」
「物理的にはそうだろうけどさあ。気持ち的にはネズミ算式にたっぷり増えてるよ」

 そう言ってボクは、自分と同じように教室の机に縛り付けられた隣人を見る。ふわっと窓から夏風が吹いてきて、彼の隠れた黄金の瞳が一瞬顕わになった。

 ボクたちは名誉ある

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最後の一葉を吹き飛ばす【#第62回whrワンドロ・ワンライ】

「あーあ、私にもベアマンさんが来ないかなぁ」
「なにそいつ。熊人間?」

 びゅうう、と窓から病室へ強い風が吹き抜ける。カーテンがぶわりと膨らみ、窓際のベッドで体を起こしている線の細い女性の姿を一瞬かき消した。その隣のベッドをあてがわれている矢後は、寝ころんだまま退屈そうに彼女へ相槌を打つ。彼女は薄いレースカーテンをさりさりと開け矢後へ向き直った。

「私を助けてくれるヒーロー。『最後の一葉』って

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