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200526_その歌に救われた朝と夜の話2

大学2年の夏、恋人ができた。世間一般でいう「お付き合い」を経験したのは、彼が初めてだったと思う。本当に好きだった。

彼と過ごした時間の中にも、SEVENTEENの音楽があったことは確か。今でも聴くたびに思い出す景色がいくつかある。

例えば、駅舎の待合室。
冬に差し掛かろうとする頃、改築前で木造だった待合室はやはり寒くて、その中で彼から借りた小説を読んでいた。イヤホンから流していたのはCHANGE UP。
この曲を聴くたびに、当時読んでいた小説『いなくなれ群青』に出てくる階段島が頭に浮かぶ。七草や真辺由宇が動き出す。私にとってCHANGE UPは、透き通るような寒さを纏った優しく哀しい歌なのだ。
それから、TRAUMAも聴いていた。文字通りトラウマになっていた曲なのかもしれない。この前のコンサートで披露してくれたので、今では抱き締めたくなるほど愛おしい曲になった。

CLAPはカラオケで流れていた。
コンサートでの思い出の方がよっぽど強烈だけど、それでもほんの少し、デートの時の秘密めいた時間を思い出してしまう曲だ。



そして2018年。この1年は、自分のことであまりにも精一杯だった。立て続けに実習があり、恋人と別れ、アルバイト先でも恋愛のごたごたがあった。成長と呼べば聞こえはいいが、とても美談にできるような年ではなかった。


2月に開催された横浜アリーナでのコンサート『SVT』は、私が唯一行けなかったコンサートだ。何故なら実習と被っていたから。無理したら行けたのかもしれないけど、どう考えても実習に支障をきたすスケジュールになる。そうとなれば、私は「行かない」選択をした。
結局、高校時代と変わらず、一番優先させるのは自分の夢だったのだ。
でも、CLAPから始まるコンサートを見たかった未練はほんの少し残っている。


この時期は自分の気持ちがSEVENTEENから少し離れていて、THANKSもすぐに聴くことはできなかった。
DIRECTOR'S CUTは私が唯一買っていないアルバムだと思う。
たぶん、いつか買うんだろう。まだその「いつか」が来ていないだけの話。


5月、SEVENTEENが遂に日本デビューを果たした。
デビュー曲を初めて聴いたのは、幼稚園へと向かう雨上がりの朝だっただろうか。ラジオか何かで配信された曲を、イヤホンで必死に聴いたのを覚えている。
幼稚園実習は終わりが見えないほど途方もなくて、苦手なピアノも相まってかなり負荷がかかっていた。泣きながら帰ることも多かった。
それでもやりきれたのは、SEVENTEENが「今すぐ電話して」「すぐ行くよ」と歌ってくれていたからだ。現実的じゃないけど、それでも物凄く救われていた。

それから、デビューアルバムに20の日本語バージョンが収録されていたことも本当に嬉しかった。
私の大好きな曲なのだ。本当に、本気で大好き。
春の風が吹きこむ、爽やかで程よく甘くて、愛らしい曲。ジョンハンさんの「拗れ 拗れ Baby 君に拗らせた Lady」が大好き。


幼稚園実習が終わるとすぐに、大学3年生の夏がやってきた。
7月、オッチョナでのカムバック日。思わず「おかえり!」と叫び出したくなった。
イエップダ(アジュナイス)辺りまでの甘酸っぱさを彷彿させるような曲だと思った。つまり私の好みドンピシャ。

オッチョナを最初に聴いたのは、夜の高速バスの中。遠距離恋愛中だった彼の地元、長野から帰る途中だった。高速バスの、やけに大きなガラス窓の奥に見つめた夜空や、高速道路の灯りを思い出す。


9月になると再び実習が始まった。今度は2週間ほど新宿の大久保に通った。
うだるような夏の夜、風俗の看板が並ぶ駅のホームで、Our Dawn Is Hotter Than Dayを聴きながら家へと帰る電車を待っていた。
今まで見えていなかった現実のひとかけらを突きつけられて、考えることの多い日々だった。毎日変わる落書き、高架下のケバブ屋、迷い込むようにして辿り着いた神社の夏祭り。
この曲を聴くたびに、新宿の街を好きにも嫌いにもなった日々を思い出す。


9月4日、9日、さいたまスーパーアリーナでの『IDEAL CUT』に行った。
初めて、SEVENTEENのコンサートで"知らない曲"に出会した。DIRECTOR'S CUTに収録されていた曲だ。「ああ、離れていたんだな」と実感させられた。別に悪いことではないけど、ただ、実感した。
Run to Youはナルトの主題歌みたいだなと思った。Thinkin' about Youは、ボンボンイの演出含め最高に可愛い曲でいっきにお気に入りになった。コンサートで一番印象深かった曲でもある。

このコンサートやオッチョナの存在をきっかけに、また少しずつSEVENTEENへの心の距離が近くなっていったように思う。秋頃に、実習と恋愛に区切りがついたことも大きかったのかもしれない。



2019年、記憶に新しい1年。まず1月にスミチャが解禁された。
オッチョナから一転してのダークコンセプト。ジョンハンさんのスタイリングがすごく好きなMVだ。
正直、ダークコンセプトは好みじゃないのでそこまではまっていないけれど、スミチャから始まるコンサートは滾るものがあった。

そしてHomeでのカムバック。ジスハンで始まる曲に、最高以外の選択肢はない。
MVはどのカットをとっても素晴らしくて、特に海を背景にしたジョシュアちゃんが好きだった。


4月、大好きなHARUコンサート!
桜舞う季節に、初めて福岡へ行った。友達とちょっと喧嘩したので、良い思い出だけとは言い切れないけど、それでも本当に楽しかった。
コンサートも旅行も、どちらも初めて尽くしで、その全てに桜が舞っていて美しかった。

福岡で初日公演を楽しんだあと、9日のさいたまスーパーアリーナ、21日の幕張メッセにも行った。

コルコルでの登場、最初のバーノンちゃんやバイクに跨ったジョンハンさんが最高だった。それから、後半のオッチョナ〜のステージも大好きだ。
オッチョナ、アジュナイス、アッキンダ、そして幻のBOOM BOOM。どう考えても私の大好きなセトリ。至福だった。
ユニット別のステージも全部好きで、特にヒポチのチェッキンとWhat's Goodは抱きしめたくなるほど好きだ。コンサートで聴くチェッキンは本当に堪らなく愛おしい。こうやって世界の色んなところに思い出を刻んでいるのだな……と思いながら、スポットライトが照らす4人を見つめていた。


風が少しずつ夏の気配を纏ってきた5月、SEVENTEENのデビュー4周年、日本デビュー1周年、そして日本でのファーストシングル「Happy Ending」の発売が立て続けにあった。大好きな友達と行った、ショーケースのライブビューイングが懐かしい。

ちょうど1年前の5月26日、4周年のお祝いにタルトを食べたのは相模原のファミレスだった。就職活動の下調べを兼ねてひとりで博物館やプラネタリウムに行った帰りだった。
綺麗に並んだブルーベリーが美しく、爽やかな甘酸っぱさがSEVENTEENにぴったりだと思った。


ハピエンは、初めて聴いた時「カラットのための曲だ」と思った。思い上がりかもしれないけど、でも確かにそう感じた。
デビュー曲のコルコルには少し日本市場を意識したような、SEVENTEENらしさとはまた違った要素を感じていたのだけど、2曲目のハピエンはカラットだけのことを見つめたような印象があったのだ。言葉で説明するのは難しいけれど。

ハピエンの歌詞、余すことなく好きなのだけど、特にバーノンちゃんの「君を泣かせちゃ ただではおかない」が思いきり心に突き刺さった。
私もいつか、そう言ってくれる人と添い遂げたい。そして、例えアイドルでも、そう歌ってくれたことが心底嬉しかった。

それから歌い出しの「君が必要だ」。これも同じくらい好き。
長ったらしい台詞なんかいらなくて、ただそう言ってほしかったのだと思う。ずっと、長いこと空いていた穴に優しく流れ込むような歌詞に、泣きたくなるほどの愛おしさを覚えた。


私はアイドルを応援する中で、時折、「終わり」について考えることがある。
物事は初めより終わりの方が難しく、悲しいことが多い。アイドルに至っては特に。
時に、「死」が終わりを告げることもある世界で、SEVENTEENの終わりを考えると心が揺らいだ。怖くなるとは違う、掴みようのない感覚になった。
そんな中で、本人たちが歌った終わりの歌。

「この物語は 君を守る話さ だけどね エンディングは 君が僕を助ける」
「最後終わったスクリーンに流れる クレジット光る 君の名前 隣にいる 僕の名前は ずっと一緒さ」

嗚呼、心配ない。
そう思った。ずっと心のどこかに着いていた不安じみたものが、穏やかに溶けていった。
この曲は、布団の中でひとり抱きしめながら聴きたい。宝物のように煌めいていて、これまでの時間が優しく流れていて、恋よりも透明な歌。


そして8月、新曲HITが発表された。
SEVENTEENが、SEVENTEENに向けて歌った歌。言い表せないほどの高揚感を覚えた曲だった。
圧倒的な強さで微笑む13人のことを、見つめ続けたいと思った。

9月になると、Fearをタイトル曲にしてのカムバック。ワールドツアー最中のことだった。
アルバム曲を聴きながらアルバイト先の保育園に通っていたので、聴くたびに道すがらの景色を思い出す。「バイト行きたくないな」なんていうありふれた憂鬱感と、バイト後の程よい疲れが蘇るようで少しこそばゆい。
アルバムの中ではLuckyが一番好きで、まさしく私の生き方や考え方そのもののような曲だなと思う。歌い出しの "U 괜찮아" と、 "Life is so beautiful" のフレーズが堪らなく好き。


10月から11月にかけて、大阪、横浜、幕張と全部で6公演のコンサートに入った。こんなに沢山の公演に行ったのは初めてだった。社会人を来年に控えて、遊び納めのような気持ちもあったのかもしれない。

初日の大阪公演は、大好きな友達あまのちゃんと入った。あまのちゃんと初めて会ったのがこの日だなんて、なんだか不思議な気持ちになる。もっとずっと前から知っていたみたいな気がしてしまう。
ふたりで過ごした大阪での2日間は、余すことなく宝物のような時間だった。朝の小雨に始まって、船を模した喫茶店、コンサート前の屋台ご飯、梅田駅の心地よい芝生。全てが大切な思い出だ。こういう日のために生きてるな、としみじみ思う。

初日から思い入れの多い『Ode to You』を語る上で、絶対に外せないのがTRAUMAの存在だ。
(あまのちゃんなら分かってくれると思うけど、)文字通り「腰が砕けてしまった」ステージだった。
スポットライトを浴びながらTRAUMAを歌うバーノンちゃんの瞳に、心臓を射抜かれてしまった。恋に落ちる瞬間とは、あの瞬間のことを指すのだと思う。

最近ずっとバーノンちゃんのことばかりなのは、このステージがきっかけ。おかげさまでオーラスではバーノンちゃんのうちわを片手に、ホシペンの友達と手を握り合っていた。
ホシくんとバーノンちゃんの乗ったトロッコが目の前に止まったのは、2019年1番のご褒美だった。幸せな夜の出来事。



それから、大学時代の二度目のお付き合いや、就職活動、卒論制作を乗り越えて2020年を迎えた。

一文で書いたけれど、中々つらい時期だった。特に就職活動に関しては、思う部分があって鬱になっていたし、恋人と別れ話をしたのはクリスマスだった。そんな中でも、愛すべき友達とSEVENTEENの存在に支えられ、なんとか生き抜くことができた。もう二度と戻りたくない。

SEVENTEENの13人も、つらい時期だったと思う。『Ode to You』のツアー中にディノちゃんやウォヌくんが倒れ、冬にはスンチョルさんやジョンハンさんが活動を休止していた。
言葉を、簡単に吐き出すことはできなかった。ただ待つしかなかった。
活動復帰したからといって、完全に大丈夫だなんて思っていない。どうか、これから先絶対に命を優先させていってほしい。生きていてほしい。
私はスターが好きなんじゃなくて、SEVENTEENの、13人それぞれの感性や言葉や優しさが好きなのだ。何を大切に思っているかは人それぞれだろうけど、どうか今ある愛おしさを抱きしめて離さないでほしい。これはSEVENTEENにも、私自身にも向けた言葉。


そして4月、「舞い落ちる花びら」が発売された。美しい春の歌。
最近の私に、ぴたりとはまる曲だった。同年代だからなのか、偶々なのか。5年前、4年前とは違ったものを堪らなく愛おしく感じる。

"僕らは最初で 最後の今を生きているんだよ
だから君を 「当たり前」なんて思わない"


SEVENTEENの言葉を愛おしく思うのは、もう何度目だろう。

大学受験で追い込まれていた高校3年生の私を救ってくれた13人は、今夜もまた私のお守りとなってくれている。
5周年を迎えた今、私は新社会人として働いている。ずっと憧れていた保育士になった。仕事は疲れるけど、楽しいと思える瞬間も多い。

相変わらず簡単でない毎日だけど、それでもSEVENTEENの音楽を、笑顔を、言葉を目に耳にすれば、全て大丈夫になっていく。魔法みたいだ。




5周年を13人で迎えられたこと、当たり前だなんて絶対に思わない。
一人ひとりが、SEVENTEENを心から大切に思って、しがみつき続けたから今日があるのだと思う。
私の青春時代に、ずっと歌を届けてくれてありがとう。貴方がいたから生きられた日がありました。
アイドルだけど、アイドルだから、救われたのだと思う。

とても言葉にできない思いばかりで、ずっとこうして文章にすることができなかった。私の人生と、ほんの一瞬、或いは永遠に、交わり続ける13人の男の子たちの話。



明日からも、愛おしい日々が続きますように。

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