半年

月はまだ低くて、熟したような色で鈍く光っている。
尾道に越してきて、ひとり暮らしを始めて、転職をして半年が経った。

記録として、この半年感じたことをまとめたかったけど、どうにも悲しくなってしまって書けそうにない。
泣き虫のまま強くなったように錯覚し、一人で立っている。昔は頭によぎりもしなかった様々な基準に自分を当て嵌めて、勝手に惨めになって、下を向いている。
収入、健康状態、精神、恋愛、家族との距離。

何も考えたくない。

「ここで死ねたらいい」と思っていたけど、死ぬ気もないので生きている。

どうしよう、友達が、家族が恋しくて仕方ない。単なるホームシックだろうか。だったら「単なる」は恐ろしく悲しいものだね。


こういう夜に思い出す漫画がある。
『花と影のソネット』
愛されたい、愛されたいと思っていた主人公が、ある男の子に出会って、無心で愛することの清々しさを知る物語。
「誰も私のことなんて見てないよ」と、思わず口をついて出た花乃の言葉がずっと刺さっている。

腐らずに生きていくというのは、気が遠くなることだ。
大切だって分かっているけど、私はそろそろ疲れてしまった。真面目に、誠実に、腐らずに生きていればいつか素敵な人と巡り会って愛を育んで家庭を築いていけるんだよ……と、未だ心の片隅で夢見ている私に平手打ちしたくなる。その"いつか"が来なかったとしても、あっけらかんと笑えるように、幸せの幅を決めてしまわないように、生きていきたい。


この半年は、慣れるのに必死で、家族が恋しくて仕方なくて、泣いてばかりいた。あとは寝ていた。
仕事は良い日も悪い日もある。恵まれている環境を大切にしたい。
この土地で友人も少しできた。素敵な人ばかりだよ。
ずっと尾道で暮らし続けるのか、東京に戻るのか、はたまた全く違う土地へ移るのか。今は何も分からない。浮遊感を感じながら、先を見据えることができずに過ごしている。
刹那主義なので当たり前の現状かもしれない。


ああ……実家に帰りたいな。
これが半年の感想。

また半年後には、めちゃくちゃ元気になっているかもしれない。
流れに身を任せて、芯だけはしっかりと持って、風通しよく生きていきたい。


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