自分

動物編
九ちゃん
私が小学生の頃、犬の他に九官鳥も飼っていた。
近所に住む叔母さんが、長期入院する事になって、飼えなくなるからという事で譲り受けた九ちゃん。

「九ちゃん、可愛いい」と自分で喋る。
おそらく叔母さんが言ってる言葉をそのまま覚えたのだろう。
これは面白いと思って、「九ちゃん、おはよう!」と言ってもすぐ返してくれる訳ではなく、首を傾げて聞いてるだけ。
なんだ、なかなか真似しないなと思って、TVを見てると「九ちゃん、おはよう」って後ろから聞こえてくる。
時間差。

父親が仕事で使うトラックのバックブザーも、エンジンかけると「ピー、ピー、ピー」とバックもしてないのに注意喚起のブザーが鳴る。
電話が鳴ると、「もすもす!」
父親の真似である。
訛りまで真似る。 

そしてある日、衝撃的な場面を見てしまった。
父親の友達が尋ねて来た時の事。
昔の家なので呼び鈴も無く、玄関で「いるかーい!」とか「ごめんくださーい!」
みたいに、叫んで呼ぶシステムだった我が家。
その日自分の部屋で、少年チャンピオンのこまわり君を見て大爆笑してたのだが、「いるかーい!」みたいな声が聞こえて、「あーい!」と返事。
あれ?父親はさっき出かけた筈なんだけど、いつの間に帰ったのかな。
「いるー?おーい!」、「あーい!」
またそのやり取り。
もしかしてと思い、そおっと下に降りていったら、九ちゃんとそのおじさんのやり取りだった。

誰か来た時のその返事をいつ間にか覚えたのだろう。
何度呼んでも返事はするが、なかなか出てこないので、諦めてそのおじさんは帰って行った。

また頭を傾げてこちらを見ている九ちゃん。

誰かがTVを見て笑うと、更に九ちゃんの笑い声。
それを聞いてまた笑い声、更にそれを真似る九ちゃんの笑い声。

九ちゃんがいる時代、笑いの絶えない我が家であった。

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