自分

神様編
お祓い
妻に降りてくる神様は、最初いろんな神様達が来ていたのだが、日が経つにつれ家のオシラ様が主体になっていった。
 オシラ様は夫婦の神様であるが、その男の神様の方である。

 父方の先祖の話、母方の先祖の話、妻が知らない筈の話がいろいろ出てくる。
 昔、私の母方の祖母が、その息子の事でいろんな神様を信仰していた事。
 とにかく暴れん坊で、手に負えない息子だったらしく、それを神様のご加護で何とかしようとしていたらしく、あっちの神様、こっちの神様といろいろ行って、逆にその神様や御神体が粗末になってた神様もあったとか。

 私達夫婦も、てんかんや発達障害の息子の件で病院も勿論だが、いろんな神社、お寺、神様と呼ばれるイタコの方、信仰宗教、いろいろ経験した。
 なので、信仰宗教にハマっていく人の気持ちもよく分かる。
 抜ければもっと酷い事になるんじゃないかという強迫観念、お金は自分達の「思いの形」という意識。
 そうやってズブズブと更にハマっていって、逆に家族を不幸にしていく。

 私の場合、そういう宗教に入っても、その教祖様がやたらきらびやかな衣装着たり、超高級車に乗ったりしてるのを見て急に冷めてしまう。
 皆んなから集めたお金でそんな贅沢してんの?という気持ちになり脱会するパターンなので、そう深入りはしなかった。

 ただ、息子の状況は変わらず、急に暴れたり執拗に私達を責めたり。
 どうすればいいかと頭を抱える毎日であったが、ある日の夜、妻に男のオシラ様が急に降りてきて、仏壇から数珠を取り出して、寝ている息子の部屋に入っていった。
 え?ちょっと、何する気ですか?息子が起きてしまう、と思った瞬間。

 天井の隅の方を指さして睨みつけ、いきなりその持ってきた数珠を両手で左右に力強く振って、何やら唱え出した。
 左右に振られる数珠は、ヒュンヒュンと風を切る音がし、何かをお祓いしてくれてるんだと分かった。
 しかし不思議なのは、これだけ何か唱えて数珠の音がしても息子が全く起きない事であった。
 普通であれば物音や呪文みたいな声で目が覚める筈なのだが、スヤスヤと寝ている。

 どれくらい時間が経過しただろう、唱えや動きが止まったと思ったら、私の方を振り向き、「今度はお前がやってみろ」と。
「えー!やった事無いし分からないです」でも数珠を渡され、もう真似事でいいからやるしかないと思い、手のひらを合わせ、親指と人差し指の間に数珠をかけて、思いっきり左右に振ってみた。
 しかし、先程みたいなヒュンヒュンという音は全くしない。
 妻は私より体力も無く、そんな力強く振れる筈は無いのだが、どれだけ頑張って振っても音が出るだけ強く振れない。
 まさしく神様のお力だと実感した。

 どれだけ振ったか分からないが、私の手が止められて無事お祓いは終わった。

 私には何も見えないが、何か空気が軽くなったような、そんな感じはした。
 たまたま妻に男のオシラ様が降りてきて、いろいろやってくれているが、普段生活していても目に見えない所で、どなたかが自分達を応援してくれたり、助けてくれたりしてるのかもしれないと、つくづく実感した自分であった。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?