私と琵琶のこと――琵琶を習うまでの備忘録――
みなさん、琵琶は好きですか?
……と、聞いたところで「見たことも聞いたこともない」という人がほとんどでしょう。
いや、最近は「犬王」とか、「平家物語」とか、あと「鬼滅の刃」でもちらほら出てきているらしいので、「興味はある、かも」という人は多いでしょう!(と、いうことにしておきたい。そうでなければここに書き残すことに意味がないような気がするから。)
私も、今でこそ琵琶を弾くようになりましたが、出会う前はまったくと言っていいぐらい、かかわりのない世界でした。
琵琶を習うために月に一回東京に行き、教室の発表会で演奏をするまでになっているとは、数年前の自分には信じられない話でしょう。
今、様々な切り口から琵琶に興味を持ったけれど、「どうやったら琵琶を弾けるようになるのか?」と悩んでいる人にこの文章が届くことを願っています。
さて、琵琶との出会いを話す前に、私の話を少し。
私を社会的に表すなら「フリーター、女、未婚(27歳)」。現在バイトをしながら自分の趣味を謳歌しています。
親の方針で小さいころから楽器に触れる機会は多かったのですが、親のやってほしかったピアノはあまり身が入らず、代わりに自分で選んだ吹奏楽や琴は部活動の中で楽しく演奏していました。
高校までの人生の中で、琵琶はまっっっっったく触れる機会がありませんでした。
その後、現役で京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)の文芸表現学科というところに入学しました。この学科はとにかく「文章に関することならなんでも」というところで、私は当初小説を書きたい、と学科の門を叩きました。
結果的に雑食ゆえ、詩、短歌、俳句、エッセイ、脚本、記事、zine、製本、絵本、と様々なことを学ぶことになるのですが、それはまた別の話。
学科以外にも全学共通の授業もあり、その中で私が目をつけたのが「琵琶」でした。
なぜなら本来取ろうと思っていた琴の授業が私の学年からなくなっていたからです!
なんてかなしいことでしょう。高校のときに三年間琴部にいたのでちょっと楽しみにしていたのに。
同じ和楽器で授業として存在していたのは和太鼓と琵琶ぐらいでした。太皷は中学の吹奏楽部だったときに左右の手で動きに違いが出てしまうことを知って以来苦手だったので、同じ弦楽器だし、という軽い気持ちで琵琶のほうを履修することにしました。
授業は月に二回の隔週二コマぶち抜き。課題曲は平家物語の「祇園精舎の~」という一節。
けっして長くない曲ですが、いかんせん月二回の授業で、琵琶を弾けるのは授業の間だけで、なかなか上達するのも難しい状態でした。
私の他にも十五人は授業を取っていたように思いますが、そのうちひとり、ふたりと減っていき、最終発表のときは十人を下回っていたでしょうか。
とりあえず授業には出ていたので、最終的に課題曲をきっちり弾くぐらいには上達しました。授業の成績も一番いいものをつけていただきましたよ。
でも、それはそれで、私と琵琶の縁はいったんここで途切れるのです。
私は、琵琶になんの思い入れもなければ、単位が取れればいいやぐらいの考えでやっていて、特別「この後も続けたい!」なんて考えてもいませんでした。
しかし、一応やったことに対して自慢をしたい気持ちは、少しばかりあったのです。
その年の暮れ、私は高校時代に琴部に教えに来てくださっていた先生に年賀状を出しました。「琵琶を弾きました」という文言を添えて。
このたった一言が、その後の縁を繋いでいくとは、このときの私はまったく気がついていませんでした。
つづく
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