人間失格 第三のメモ
堀木正雄
東京の下町に生まれ、自分より六つ年長者で、私立の美術学校を卒業して、家にアトリエがないので、この画塾に通い、洋画の勉強をつづけているだそうです。
「こいつが塾に来たおかげで、残念ながらおれは、第二番の美男子と言う事になった」
堀木は、色が浅黒く端正な顔をしていて、画学生には珍しく、ちゃんとした背広を着て、ネクタイの好みも地味で、そうして頭髪もポマードをつけてまん中からペったりとわけていました。 イメージ図↓
堀木の「東京案内」 東京遊び お道化役をみずからすすんでやってくれているので。自分は,返事もろくにせずに、ただ聞き流し、時折、まさか、などと言ってわらっておれば、いいのでした。
酒、煙草、淫売婦、覚え あるいまわしい雰囲気を身辺にいつも漂わせるようになった様子で、 堀木にそれを指摘され
「女達者」「おまけの付録」 堀木はそれを半分お世辞でいったのでしょうが、 堀木ごときに者に指摘せられ、屈辱に似た苦さを感ずると共に、淫売婦と遊ぶ事にも、にわかに興が覚めました。
共産主義の秘密会合 マルクス経済学の講義を受けました。
見込みのある「同志」として、噴き出したくなるほど過度に秘密めかした、さまざまの用事をたのまれるほどになったのです。
堀木におそばか天丼などをごちそうしても、父のひいきの町内の店だったら、自分は黙ってその店を出てもかまわなかったのでした。
堀木に教えられ、せっせと質屋がよいをはじめ、それでも、いつもお金に不自由をしていました。
堀木と一緒に安い酒を飲み廻ったりして、
「葉蔵」 マルクス学生の行動隊隊長というもおのに、自分はなっていたのでした。 P 要約「忙しくなってくるとpの人を忌々しいと思い」
逃げました。逃げて、さすがに、いい気持ちはせず、死ぬことにしました。
「よし、そんなら、夢の国に連れてゆく。おどろくな、酒池肉林という、・・・・・・」「カフエか?」「そう」「行こう!」
堀木は、はしゃいで、「おれは、今夜は、女に飢え渇いているんだ。女給にキスしてもいいか」「いいか。キスするぜ。おれのそばに坐った女給に、きっとキスしてみせる。いいか」 「かまわんだろう」「ありがたい!おれは女に飢え渇いているんだ」
要約 ツネ子堀木の傍に腰かける キスされて汚される
自分は水のように素直にあきらめ、堀木とツネ子の顔を見較べ、にやにやと笑いました。
「やめた!」「さすがのおれも、こんな貧乏くさい女には、・・・・・・」
閉口しきったように、腕組してツネ子をじろじろ眺め、苦笑するのでした。
第三の手記
堀木は、在宅でした。汚い露路の奥の、二階家で、堀木は二階のたった一部屋の六畳を使い、下では、堀木の老父母と、それから若い職人と三人、下駄の鼻緒を縫ったり叩いたりして製造しているのでした。
「お前には、全く呆《あき》れた。親爺さんから、お許しが出たかね。まだかい」
「おい、笑いごとじゃ無いぜ。忠告するけど、馬鹿もこのへんでやめるんだな。おれは、きょうは、用事があるんだがね。この頃、ばかにいそがしいんだ」
「おい、おい、座蒲団の糸を切らないでくれよ」
堀木の老母が、おしるこを二つお盆に載せて持って来ました。
「あ、これは」
「すみません、おしるこですか。豪気だなあ。こんな心配は、要らなかったんですよ。用事で、すぐ外出しなけれゃいけないんですから。いいえ、でも、せっかくの御自慢のおしるこを、もったいない。いただきます。お前も一つ、どうだい。おふくろが、わざわざ作ってくれたんだ。ああ、こいつあ、うめえや。豪気だなあ」
「わるいけど、おれは、きょうは用事があるんでね」
堀木は立って、上衣を着ながらそう言い、
「失敬するぜ、わるいけど」
その時、堀木に女の訪問者があり、自分の身の上も急転しました。
堀木は、にわかに活気づいて、
「や、すみません。いまね、あなたのほうへお伺いしようと思っていたのですがね、このひとが突然やって来て、いや、かまわないんです。さあ、どうぞ」
「色魔! いるかい?」
「お前の漫画は、なかなか人気が出ているそうじゃないか。アマチュアには、こわいもの知らずの糞度胸があるからかなわねえ。しかし、油断するなよ。デッサンが、ちっともなってやしないんだから」
堀木は、いよいよ得意そうに、
「世渡りの才能だけでは、いつかは、ボロが出るからな」
「しかし、お前の、女道楽もこのへんでよすんだね。これ以上は、世間が、ゆるさないからな」
「よう! 色魔。おや? これでも、いくらか分別くさい顔になりやがった。きょうは、高円寺女史からのお使者なんだがね」
「相変らず、しょっていやがる。なに、たいした事じゃないがね、たまには、高円寺のほうへも遊びに来てくれっていう御伝言さ」
「飲もうか」
と自分。
「よし」
と堀木。
忘れも、しません。むし暑い夏の夜でした。堀木は日暮頃、よれよれの浴衣を着て築地の自分のアパートにやって来て、
とにかく金を貸してくれ、という事でした。
自分の発明した遊戯で
アント=対義語
シノニム=同義語
「いや、それでは、何でもかでも皆コメになってしまう。ではね、もう一つおたずねするが、漫画家は? よもや、コメとは言えませんでしょう?」
「トラ、トラ。大悲劇名詞!」
「うるせえなあ。それじゃ、やっぱり、神だろう。神、神。なんでも、神にして置けば間違いない。腹がへったなあ」
「そりゃそうさ、お前のように、罪人では無いんだから。おれは道楽はしても、女を死なせたり、女から金を巻き上げたりなんかはしねえよ」
「ようし、それじゃ、したへ行って、ヨシちゃんと二人で罪を犯して来よう。議論より実地検分。罪のアントは、蜜豆、いや、そら豆か」
「おい! とんだ、そら豆だ。来い!」
「見ろ!」と小声で言って指差します。
自分は、ぐらぐら目まいしながら、これもまた人間の姿だ、これもまた人間の姿だ、おどろく事は無い、など劇《はげ》しい呼吸と共に胸の中で呟き、ヨシ子を助ける事も忘れ、階段に立ちつくしていました。
堀木は、大きい咳ばらいをしました。
「同情はするが、しかし、お前もこれで、少しは思い知ったろう。もう、おれは、二度とここへは来ないよ。まるで、地獄だ。……でも、ヨシちゃんは、ゆるしてやれ。お前だって、どうせ、ろくな奴じゃないんだから。失敬するぜ」
「お前は、喀血したんだってな」
堀木は、自分の前にあぐらをかいてそう言い、いままで見た事も無いくらいに優しく微笑《ほほえ》みました。その優しい微笑が、ありがたくて、うれしくて、自分はつい顔をそむけて涙を流しました。そうして彼のその優しい微笑一つで、自分は完全に打ち破られ、葬り去られてしまったのです。
堀木のあの不思議な美しい微笑に自分は泣き、判断も抵抗も忘れて自動車に乗り、そうしてここに連れて来られて、狂人という事になりました。
予言者堀木まとめ
「しかし、お前の、女道楽もこのへんでよすんだね。これ以上は、世間が、ゆるさないからな」
「トラ、トラ。大悲劇名詞!」
ようし、それじゃ、したへ行って、ヨシちゃんと二人で罪を犯して来よう。
堀木 鬼畜まとめ
とにかく金を貸してくれ、という事でした。
「見ろ!」と小声で言って指差します。
堀木は、大きい咳ばらいをしました。
堀木と対義語の遊びまとめ
最後 罪の対語はなんだ
罪と罰。ドストエフスキイ 罪と罰を同義語としたら?
ああ、わかりかけた
名探偵コニャン
罪の対語はなんだ?
罰 ツネ子の同義語はヨシ子
そうか!そういうことだなコニャン!
zzzz
罰 ツネ子の同義語はヨシ子 ヨシ子はツネ子の件の罰
こう考えるとヨシ子がなぜ汚されたのか?わかる 気がする
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