「ソフトウェア品質を高める開発者テスト」を読んで

著者

著者はあの「知識ゼロから学ぶソフトウェアテスト」でお馴染みの高橋寿一さんです。ソフトウェアテストに携わっているほとんどの人は知っている方なのではないかと思います。この方はMicrosoft、SAP、ソニーというそれぞれPC、エンタープライズ、組み込み製品のドメインの中の大企業に勤められていました。そういった意味でも書いてある内容に説得力があると思います。単に私が権威に弱いだけなのかもしれませんがw

対象者

著書名の通り対象者は「開発者」です。ただ、QAエンジニアやテストエンジニアの方も読まれているのではないかと思います。むしろ前述の有名な本の著者だけにQAエンジニアやテストエンジニアの方が多いかもしれませんね。統計は取っていませんが。あとは、QAエンジニアやテストエンジニアは日々の業務で、開発者テストをなんとかしたいと思っている方が多いというもありそうです。私もその一人です。システムテストだけではどうにもならない状況がソフトウェア開発現場で起こっていて、だから単体テストをなんとかしたい、でもどのようにアプローチしたいかわからない。そういった人にはうってつけの著書だと思います。

内容

内容としては開発者が行う単体テストなのですが、この単体テストという名称が曲者で、人によって組織によって定義が異なってきます。例えばブラックボックスで機能単体をテストする場合にも単体テストと読んでいる場合があるからです。なのでこの著書では明確に「関数の網羅率を計測しロジックの確からしさを確認するホワイトボックステストのことを「単体テスト」といい、さらに名称も「コードベースの単体テスト」とされています。わかりやすいですね。

個々の内容はあまり書きませんが、全体とを通していうと
・これだけやっておけばいい、という書き方なので安心感がある
・基準値を示されているので実際の現場でも適用しやすくなる

これだけやっておけばいい

例えば開発者テストのためにテスト手法は「境界値テスト」「状態遷移テスト」「組み合わせテスト」の3つだけ知っておけばいい、というような書かれ方をされます。いろんな本を見ているとテスト手法だけでもたくさんあり、なんだか全部知らないといけないような気分になってやる気を削がれがちなのですが、このようにいくつかだけをやっておけばいい、といってもらえるとすごく勉強する気になるなと思います。

基準値

基準値って数ある本の中でもなかなか示してくれないんですよね。きっとそれぞれに基準値は持っているはずなのですが、それは貴重なノウハウであることが多いのと、出した時に責任が取れないからなんだと思います(責任が取れないからというのは本著でも述べられていました)。
例えばMcCabeやWMCの基準値をどのくらいに設定すればいいのかを具体的に書かれていました。

最後に

個人的には、開発者テストの実サンプルが載っていたのがとてもよかったです。CI/CDを構築してみたかったのですが、なかなかハードルも高く手がつけられていない状態でした。しかし本著では具体的なサンプルが書かれていたので少なくともその通りやってみれば構築はできそうでした。
また、私は普段、テスト会社にいる関係で開発者テストに触れる機会がなかなかありませんでした。そのくせ、テストプロセス診断もやっている関係で、「開発者テストを強化しないといけない」と提案したくなる時が多々あったのですが、実際に自分でやったことがないので具体的な対策を提案してできなかったりしました。しかし本著を読むことでその具体的な対策のヒントを得ることができました。
さらに本著は非常に読みやすい本です。全部で200ページほどなのですが、2時間程度で読むことができました。それなのに内容は充実していて、周りの人にもお薦めしました。


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