品質保証と品質管理の違い
はじめに
ここ最近、ちょこちょこと「『品質保証』と『品質管理』の違い」について話題に上がることがあったのですが、あまり自分自身の言葉で明確に説明できないなと感じたので自分なりの定義を作ろうと思いそれを記事にしてみました。
ネットで調べてみると「品質保証は買い手視点、品質管理は作り手視点」のように書かれていることもありましたが、この定義が自分の中の定義といまいち合わなかったという背景もあります。
ただ、ここでの定義はあくまでぼく自身が理解しやすいように、かつ説明しやすいように定義づけしているのでその正当性は保証していませんのでご注意ください。
定義する前に
「品質保証」と「品質管理」の違いについて調べていくと「品質マネジメント」という言葉も出てきました。この品質マネジメントという言葉ですが、これが少しやっかいなようで、日本では「マネジメント」と「コントロール」を一貫して「管理」という言葉で表されるので日本でいう「品質管理」というと「品質マネジメント」として扱われていることもありそうです。
こうなってくると自分自身が理解する上でも障害になりそうだったのでここでは「品質マネジメント」と「品質管理」を分けて表現するようにします。
また、「品質保証」などの定義は欧米と日本で異なるようです。ここでいう定義は基本として日本での定義をベースにしています。
品質マネジメント
品質マネジメントは、管理対象が「質」で「お客様が安心して使っていただけるような製品を提供するための全ての活動」のことのようです。
品質マネジメントでは、品質方針の設定と品質目標が設定されます。それに基づいて品質計画が立てられ、品質保証や品質管理、品質改善というような活動がなされます。この一連の活動が品質マネジメントと言われるようです。
品質保証活動や品質管理活動は品質マネジメントに包含されていますので品質マネジメントは品質保証や品質管理を含む総称のような概念になります。
品質保証や品質管理との違いでいうと、品質マネジメントはそれらの上位概念であり品質保証や品質管理のベースとなるもの、と捉えることができそうです。
品質保証とは
品質保証とは「消費者が満足する製品またはサービスの品質を保証するための組織的・体系的な活動」のようです。
品質保証は品質管理の目的に相当するものです。
品質保証においては組織的かつ体系的というのがポイントで、それは品質保証システム(品質保証体系)として品質保証の仕組みが定められます。
この品質保証の仕組みは、市場ニーズ調査、製品企画から始まり、出荷後のサービスに至る各開発工程においてどの部門が何をすべきかを明確にして品質をどのように作り込み保証していくのかを規定するものです。
さらにこの品質保証システムで示された組織を内容面でまとめ技術面(構造化プログラミングやテスト技法など)から整理し、体系化したものを品質保証技術体系というものがあります。
こういったことから品質保証とは、品質を保証するために各開発工程において「誰が」「何をすべきか」を明確にしたものでどちらかというと組織的な意味合いが強いと捉えられそうです。
品質管理とは
JISでは品質管理とは買い手の要求にあった品質の品物、またはサービスを経済的に作り出すための体系とあります。
品質管理とは目的を達成するために継続的、効率よく実施するために標準化を基にPDCAサイクルを回し、特にCheckとActにより問題点から改善に繋げていくプロセスを管理する体系的な活動になります。
品質管理の目的に相当するものは品質保証となるので、品質管理は品質保証を継続的、かつ効率よく達成するためにどのようにPDCAサイクルを回していくのかを定義づけします。
つまりは品質を保証するために各開発工程で「誰が」「何をすべきか」定めたことに対して、どのようにPDCAサイクルを回していくのかを定めたものであると捉えられそうです。
品質保証と品質管理の違い
それではここで本題である品質保証と品質管理の違いを。
品質保証は品質を保つために各開発工程で誰が何をすべきか、かつその技術要素を定めたものであり、どちらかといえば組織的な内容を体系化したものとなります。
一方、品質管理は品質保証する上で、どのように管理していくのかを定めたものであり、プロセスを体系化したものとなります。
品質保証で定められたことに対してどのように管理していくかを定めたものが品質管理となります。
なんか言葉を捉えればすぐに行き着きそうな結論になってしまいました。
品質マネジメントと品質保証、品質管理の違い
ついでに品質マネジメントと品質保証、品質管理の違いを。
品質マネジメントは品質保証、品質管理を包含しています。品質マネジメントをするための活動の一部が品質保証と品質管理となります。
よって、品質マネジメントは品質保証と品質管理をする上で、もしくは品質保証として組織的な内容を体系化する、および品質管理として各開発工程でのプロセスを体系化するためのベースとなるものとなります。
品質保証や品質管理で体系化するためには何をゴールとすべきか(品質目標)、どんな方針にするか(品質方針)の指針がないと体系化できませんからね。
参考文献
それぞれの定義は「ソフトウェア品質保証の考え方と実際」と「ソフトウェア品質知識体系ガイド第3版(SQuBOK Guide V3)」を参照しています。それぞれの書籍ではISOや石川氏の書籍等を参考にされています。ここでは個々の定義をどの文献から参照しているかは明記していませんが、これらの書籍で調べてもらえると参照されている文献について知ることができます。
留意点
差し込んでいる図はそれぞれのシステム(仕組み)を図示したものとなります。厳密にはそれぞれの言葉の定義とシステムとは異なるものだとは思いますが自分自身はシステムを理解することでそれぞれの定義のイメージがしやすかったためにこの図を使っています。
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