マーロン(森雅浩さん)が語る(4)〜来し方をふり返り、次のステージへ!
色褪せない「都市と自然をつなぐ」コンセプト
Be-Nature Schoolの最初の企画書に、「都市生活者が自然とのつながりを感じて生きるため」ってあったのね。こないだ、これまでの仕事をずーっと書き出してみて、やっぱり「都市と自然をつなぐ」ことがミッションなのかなって改めて思った。それは20年前と変わってないなと。ワークショップの参加者を見てると、そういうのを必要としてる人がまだいると思うし。
何をやるにしても、場所ってすごく大事。前に塩見直紀さんのワークショップで「どこでやるのか」っていう話があったとき、東京って、やっぱかなり特殊なんだなって思った。なんか、場所でありながら場所でないっていうか。
都会にいる人はね、南の島とかどっかの田舎でなんかやりたいとか言うでしょ。オレも塩見さんのとき、最初は三浦半島とか鎌倉あたりって書いてみたんだけどさ、実はそういうとこじゃないんだよ。なんか、そうゆう「いつかは」みたいことじゃなくて、いま自分のいる範囲内で具体的に事を起こせってことなんだよね。だからオレにとっての場所って、やっぱり渋谷・代官山・表参道だなって思ったんだよね。
そのうえで、都会のオフィスに加えて、定期的に通うようなフィールドがあるといいなって真剣に考えてる。地面のあるところにかかわる仕事のスタイルをつくりたいなって。古い話になるけど、10年くらい前に受けたインタビューでこれからやりたいことを聞かれて、「ビーネイチャーカフェと伊豆七島自然学校ネットワークがやりたいです」って答えてたの。だから前から同じようなこと考えてたんだよね。
世界は「変える」ものなのか !?
将来の話を考えるとき、野望っていうより、その前に失望があるんだよ。若いころは「世界は変わる」と思ってたんだよね。「資本主義はもっと早く崩壊するだろう」「経済優先の時代は終わるだろう」とかさ、大学生のときくらいから考えてた。もっとさかのぼれば、子供のころから「このままの形で地球が続くわけないじゃん」って。
ちょっと前までは「100歳くらいまで生きたい」とか思ってたんだよ。そのくらいになれば世界は変わってるんじゃないかと思って。「次には今までとは違う世界が来るだろう」みたいなことだけを信じてやってきた。新しい世界を見たいっていう欲求が、基本的にオレのドライブだったわけ。イルカ・クジラ会議をやってたころって、そんな感じがすごかったんだよ。ホント面白かった。「もう世界が変わるぜ!」っていうくらいの勢いだったんだよ。でも、結局そんな簡単に世界なんて変わんないんだよな、って思った。それがつまり失望ね。
でもさ、そういう考え方は違うんだなって気づいたね。なんか全然変わってないように見えても、もしかしたら既に大きく変わってるかもしれない。単に気づかないだけで。だって時代とか世界って、何かガラッと変わるわけじゃないでしょ。
今のオレには「世界は変えられる!」って言い切るエネルギーはないかなー。まぁ、民ちゃん(中野民夫さん)が言うように、「世界は『変わる』ものであって、『変える』ものではないんだ」ってことかもしれないけどね。
で、そういう中で自分がどんな役割を果たしていこうかって考えるわけですよ。Be-Nature Schoolみたいなことをやってる以上はね。そういう意味で、最近の自分自身の変化としては、「もうちょっと自分が責任とんなきゃいけないな」とか、「リーダーシップ発揮しなきゃいけないな」とか思うようになった。思ってることはあるけど、うまく言えない部分があるから、そこは何とかしたいなと。自分のビジョンとか考えを語るのは下手だと思う。ホントは語りたいんだけど。
20年の時を経た「種」が再び
Be-Nature Schoolは今まで外にいっぱい種を蒔いてきたのかもしれない。だから、20周年っていう機会が、散らばっていった種が集まる場になるといいよね。「こんなところで芽が出ました~」「こんな大木がいっぱい生えました!」とか。もしくは「なんか相変わらずぺんぺん草です」っていうのもありだし。
Be-Nature Schoolって苗圃みたいなものだよ。そこから飛び散っていった種が、「ここから飛んでったんだよね」っていう「ここ」にもう1回意識を向ける。「一個一個は違う種だったけど、似たところもあったね」とか、「あ、こんな種もあったのね」とか。そういうことをこの1年で再確認できたら、「20年やってきてよかったな」って思えるよね。たぶんそれが20周年ってことなんだろうな。
種が集まって、そこからまた新しい種ができるってことかな。戻ってきた種同士が出会ったりつながったりして、かけ合わせができるとかね。自然配合でね。
もう種じゃない人もいるかもしれない。充分に育って実り、そこからまた次の種が落ちる。第2世代、第3世代の種を生んでるといいな、と。やっぱ種だね、種はいいねぇ…。
20周年って、もっと前を向かなきゃいけないんだろうけど、こうやって一度ちゃんと後ろを向いて、種の行方を確かめることが必要なのかもしれないな。(完)
*以上4回をもって、マーロン(森雅浩さん)のシリーズは終了です。
次はどなたが登場するのか、どうぞお楽しみに!
(聞き書き・鈴木慈子、構成/編集・小島和子)