ようちゃんプロフィール写真

ようちゃん(村尾洋介さん)が語る いつも誰かと共有していたから

Be-Nature School での経験は、どんな意味があったのでしょうか。 今、何を感じてどんな暮らしをしているのでしょうか? 20周年の節目に、一人ひとりの声を聴いてみたい。そんな想いから続けてきた参加者インタビュー。今回は、ようちゃんこと村尾洋介さん。

ようちゃんは2000年に開催した1年間のプログラム、海のこころ案内人養成ゼミナール(=通称海ゼミ)の卒業生です。Be-Nature Schoolに参加していた2000年当時も、バリバリの働き盛りまっただ中で日々の仕事をこなしながら、毎月の海やプールのプログラムに通っていました。Be-Nature School 20周年にあたって2016年秋に海ゼミの同窓会が開かれた際には、その幹事役を担ってくれました。今も当時と変わらず、仕事を続けながら、プライベートでは、海に通いスキンダイビングを楽しんでいるそうです。

Q1: 海ゼミでは、16人のゼミ仲間と共に、月1回は海に通い続けるという濃い時間を過ごしましたね。そんな『海ゼミ』で印象に残っていることは? 

思い出は山ほどあります。

ひとつ、素敵な思い出は、夏の合宿で寝そべって星を眺めたことです。

奄美大島に、夏のスノーケリング合宿に出かけました。滞在中の民宿からみんなで夜の散歩に出かけると、満天の星空でした。そこは寂しい集落で、夜は車の通りがまったくなかったので、「じゃあ、ここに寝そべって空を眺めよう」ということになって、みんなでアスファルトの上にごろんと寝て、星空をぼうっと眺めました。どんな星空だったのか、視覚はまったく覚えていないのですが、とても幸せな気持ちだったことはよく覚えています。(車通りがなかったとはいえ、道路に寝るのは危険ですので、みなさんはマネしないでくださいね。)

このお話は、自然と関係あるけど、海には関係ないですね。

海の思い出では、海の中でバースデイパーティをしたことも印象に残っています。スノーケリング中に、メンバーの一人が誕生日であることがわかりました。講師のヒゲさん(長谷川孝一さん)の発案で、浅い海底の岩をバースデイケーキに見立て、その岩についているケヤリムシ(花のような触手を広げているゴカイの仲間)をローソクの灯だとイメージしました。

お誕生日のメンバーが海に潜り、ケヤリムシに手をかざすと、ローソクの灯が消えるように、ケヤリムシが触手をピュッピュッと引っ込めていきました。とても素敵な光景でした。

Q2:Be-Nature Schoolをきっかけに自然から学んだこと、教えてもらったことは何ですか?

私は子供時代、自然の中で思いきり遊ぶ、という経験が少なかったので、大人になって、Be-Nature Schoolで遊び直しさせてもらい、至福の時間をもらいました。

自然の面白いところは、自然には「作為がない」ことだと思います。現代社会では「してはいけない」「こうしたほうがいい」「それはやらないほうがいい」など、人の行動にはたらきかける情報が溢れかえっています。

一方で、自然は、なんの作為も意図も努力目標もなく、ただ「そこにある」。それでいて、常に変化もしている。だから自然を感じていれば、楽しいし、何も考えなくても充足できる。それが醍醐味だと思っています。

Q3:海ゼミに参加して良かった!と思えることは何ですか?

海ゼミ以前にも、ダイビングショップのスノーケリングツアー等には参加していたのですが、海ゼミでは1年間同じメンバーでプールや海に出かけ、自然体験も人間関係もとても濃いものになりました。その後、10年以上つきあいが続いている友達もいます。

Q4:Be-Nature Schoolでの体験や出会いは、今の自分の暮らし方や生き方、価値観にどのような影響を与えましたか? 自分自身に変わったことがあれば教えてください。どのような変化ですか?

自然の豊かさを感じるようになったこと自体が、大きな変化です。

そもそも、スノーケリングや海ゼミに出会う前、私は映画や音楽が趣味のインドアな生活をしていて、自然に接する機会はあまりありませんでした。

人が行き交う街の風景を眺めて歩くのが趣味でした。街は、人々の意図が、ごちゃごちゃと集まっているものだと思います。あちこち歩きながら、混沌とした街の風景を眺めるのが好きです。スノーケリングに出会い、海ゼミで海の楽しみ方を知ってからは、街だけでなく、海の風景を眺めるのが好きになりました。

自然を楽しむとき、いろいろなアプローチがあると思います。魚の名前を覚えたり、生態観察をしたりが好きな方もいると思いますが、私は海をただ感じることを楽しんでいます。

自然はただそこにあり、営みを続けていて、古い命が朽ちて消えていったり、入れ替わるように新しい命が生まれたりしながら、常に移ろい変わっています。海の表情も、ベタ凪で快適に泳いで楽しめるときもあれば、荒れて濁って海に入れないときもあり、一瞬も同じ状態はありません。そんな海を、その時ただ感じるままに、瞬間瞬間を楽しんでいます。ただ、私は観察力が高い方ではないので、ぼーっとしていて変化を見逃していることも多いと思いますが。

海という対象が広がり、自然の豊かさを感じる力が深まりました。海ゼミで1年間、海と触れ合っていたから、自然を感じるこころが磨かれてきたのだと思います。

海ゼミを卒業した後、私は、年に数回自然の中でしっかり遊ぶ時間をとるようになっています。

Q6:あなたにとってBe-Nature Schoolはどんな存在ですか?

とても濃い自然体験・人間関係に会わせてくれた「出会いの場」です。

Q7:自然や環境、未来につながることで、今は、どのようなことを感じ考えていますか? 思っていること、感じていること、取り組もうとしていることがあれば、ぜひ教えてください。Be-Nature Schoolに直接関係ないことでも構いません。

私は子供時代泳ぎが苦手で、大人になるまでコンプレックスに感じていました。30歳頃に独学で泳げるようになり、その後スノーケリングにも出会い、自然に触れることの楽しさを知りました。

そういう経験があるので、同じように泳ぎが苦手な大人に水泳の基礎の基礎を教えてみたいと考え、仕事仲間5人ほどに実際に教えてみました。全員が、30分~2時間ほどで泳げるようになりました。泳げるようになった後も、自然に触れるようになったのは1人だけですが……。

自然を楽しむきっかけや、人生に変化をもたらすきっかけは、何歳になっても遅すぎることはないと思います。私は教えることのプロではありませんが、いろんな人が、新しい楽しみに出会う機会を得てほしいです。特に、自然と触れ合う楽しみを知る助けになれれば、という思いをもっています。

Q8:これからの未来を創っていくために必要なもの(あるいはコト、人)は何だと思いますか?

自然をこころで感じて、触れることです。

自然というのは、怖さもあるけど、楽しくて豊かなものだと思います。

そして、その楽しさは「倍々」で、ふくらんでいきます。

色や形がへんてこな生き物の面白い行動や、太陽の光がさしこむ海の中の神秘的な風景など、自然界は未知のできことだらけです。そんな自然に触れるたびにこころが動き、知れば知るほどに、自分自身が豊かになっていきました。また次もでかけて行こうと思い、どんな出会いがあるのか?と次の楽しみが増えていきます。

何より自然との触れ合いが「倍々」になっていったのは、いつも誰かとその豊かさを共有していたからでもありました。

16人の仲間と海ゼミを受講していた当時、私は39歳でした。大人だったけど「青春」とも言えるような時間でした。ああゆう経験はなかなかできないことです。あのとき出会った自然や人が私の人生に豊かさを与えてくれました。

一般的には10代が青春と言われます。でも私は、青春は、人生30代からでも、やってくるのではないかな?と思います。青春のころは、進学だの就職だの結婚だのと、人生に関わるできごとがたくさんあって、それに夢中で、自然に触れる時間も、こころの余裕ももてない人が多いのではないでしょうか。

人生の節目やターニングポイントをすぎて、いろいろな想いを経験してきた30代からの大人たちに、本気で自然に触れてみることをおすすめしたいです。きっと人生が「倍々」に豊かになっていきますから。

*話を聴かせてもらうことで、思い出したり、気づいたり、再確認できたことがありました。ありがとうございました!

インタビュアー(帖佐仁美)