ヒゲさん(長谷川孝一さん)が語る(2)〜大事なことほど言葉にできない

ワークショップは民ちゃんがうまくリードしてくれた。アメリカ西海岸で学んで帰ってきたばかりで、それを私たち相手にやってくれたわけ。まだ日本で試してなかったから、われわれが第1号なんだよ(笑)。

コンセプト決めるのに、言葉にしちゃうとみんなバラバラなんだけど、どっかしら同じところもあるだろうと、お互いに思うことを正直に出そうよって、ワークショップを繰り返し開いたわけ。議論というよりも感覚を通してのワークショップ。

民ちゃんだって学んできたばっかりだから、どう進行していいか探りながらやっていたんだ、きっと。試行錯誤のワークショップ。レアだね。それでもいい雰囲気でやってくれてね。

ワークショップですごくよかったのが、呼吸法やリラクゼーション。実はその前から、自分でも本を買って試していたんだけど、全然できなくて。

例えば全身脱力法ってあるでしょ。その頃はそのことができなかったの。つまりリラックスしたコンディションを自分でつくれなかった。やり方は本に書いてあるんだけど、自分だけでは中途半端でうまくいかない。心理学の本も読んだけど、なんだかわけがわかんなくなっちゃうし。

で、自分は前から学びたかったこともあって、民ちゃんのリードに素直に従ったんだ。そしたら心身ともにけっこうハマっていって。うまくできなくて放っといたものが、動き始めた感じだった。

あるときのワークで、「ちょっとリラックスしてから話そうよ」って床にみんなで寝てさ、「何が見える?」と民ちゃんが言ったの。そしたら完全にリラックスしてしまい、いつの間にか真っ白な光の空間がわぁ~って広がってきて。実際に目には見えないけど、心の中で見えてるわけ。完全にリラックスできるのに気づいて、「あ、すごいなぁ~」と素直にね。それを味わったのは今でもはっきり思い出せる。

もうほんとに、頭のなかに邪念がなくて。それまで私、邪念だらけの頭だったんだ。ウワンウワンウワン!って、邪念に縛られていたんだけど、民ちゃんのワークが、そういうものを整えてくれたんだね。知らない間に、本当にリラクゼーションができるようになった。テクニックを身につけたというよりは、自分がテクニックに乗っかって自然に変わっていったという感じ。

そうなってくると、言葉でコンセプトがどうこうじゃなくて、気持ちの奥底にどう入り込んでいって、何か言葉じゃない「確かな」ものが見つけ合えるのでは、という感じになっていった。あまり深く考えなくて、素直に気持ちよく。

テクニックでそこに行ったというより、リラックスした素直な状態で自然に自分で何かつかんだり、モノを言ったりしてたと思うんだ。民ちゃんがやりたいのはこういうことなのかな、って私なりに理解できた。

1年半の間、話し合いというよりも、ずーっとリラクゼーションやっていたんだね(笑)。

また別の話になるけれど、今思い起こすと、「ファシリテーション」の肝を、そのとき学んだんだと思ってる。

ファシリテーションの「技法」じゃなくて心の動き。どういう環境になるとみんなの心がかかわり始めるのかっていうことが、感覚としてわかった。今でこそ、言葉やテクニック、方法論でワークショップを伝えているけど、本質はそこだね。マインドの部分で、アメリカ西海岸で民ちゃんがカラダに入れてきたものを、素直に出してくれたから伝わるものがあった。まさに「日本のファシリテーションの夜明けに立ち会った?」みたいなね!大げさかな(笑)。

(つづく)

*最終回となる第3回の最後には、どんな思いで今回のインタビューを受けていただいたのか、読み手のみなさんへのメッセージとともにお伝えします。どうぞお楽しみに!

(聞き書き・鈴木慈子、構成/編集・小島和子)