マーロン(森雅浩さん)が語る(3)〜人を生かし、自然に生かされた20年

「ぽっ」と差し出されたものを形に

Be-Nature Schoolを立ち上げるときさ、みんなでワイワイやりながら準備したって話したでしょ。だから、Be-Nature Schoolは全然オレのものって感じじゃないの。代表なんて決めなかったんだよ、当初は。何年か経ってしかたなく「事務局長」とか「代表」って名乗るようになったんだけど、けっこう違和感あったね。今はさすがに「代表です」とか「社長です」とかふつうに言うけどね。

オレの場合、意思がないとは言わないけど、「明確にこうしたい!」というよりは「こうなっちゃいました」みたいな感じ。それで気づいたら20年、かな。5年後とか10年後とかの目標を定めてやるようなタイプじゃないのね。「ぽっ」と誰かが差し出すものを、「ふっ」てつかんで「すっ」と形にするのをずっとやってきた。たぶん基本的にそういうスタイルだから、「ぽっ」と出るものがないとダメなんだ。

例えばファシリテーション講座にしてもそう。民ちゃん(中野民夫さん)が「ファシリテーション講座、やろうと思うんだよね~」って言ったときに、「あぁ、いいですね、やりましょう」「じゃ、次のミーティング、いつにしましょうか」って、やらざるをえないところまでお膳立てする。

「自分という自然に出会う」のシリーズも、あるとき民ちゃんが企画のメモみたいのを持ってきたの。で、「いいんじゃないですか、やりましょうよ」ってなって、次にはもう「この前言ってたあれですけど、はい、企画進めましょう!」って案を出したら、民ちゃんは「あぁそうですか、忘れてた」って。本人は企画を出したことさえ忘れてたりしてね。

人を生かすプロデューサーとして

「田中優的身の立て方講座」ってあったじゃない? 3.11の後に田中優さんのことを初めて知ったんだけど、その時に、「優さん一人で講演会やるんじゃなくて、もっと同じようなことをしてくれる人を増やさないといけないですよね」って話したの。

そのあと1年くらいお付き合いして関係性ができてきたころに、そんな講座をやりたいと声かけてくれて。なんだか先方のスタッフは、思いがあってもなかなか形にならなかったらしいんだよね。「じゃ、ミーティングやりますか」っていうことで、話聞きながら「こういうふうにすれば形になりますよね。じゃぁ、こうしましょう」って、その場で講座の大筋ができちゃった感じ。そういう組み立てはもう慣れてるから、そういうところは早い。そこはプロだなぁって自分で思いました(笑)。

あとね、基本は「この人おもしろい!」って思ったらプログラムにしちゃう。それの積み重ねかな。

やっていくうちに、「もうちょっと行けるな」って思ったら次に行くんだけど、「ここは自分がかかわってもあんまり意味ないかな」と思うと引いちゃう。逆に、こっちがラブコールしても、相手が自分で始めちゃう場合もあるし。要するに、コラボする意味がなければ成り立たないわけ。

そこは限界を感じるよね。こっちには圧倒的なコンテンツがないからね。そもそもBe-Nature Schoolはそういう成り立ちなの。コンテンツを持ってるのは、ヒゲさんだったりメグだったり。オレにはないね、コンテンツは。だからプロデューサーなんだよ。

オレが民ちゃんと仲いいのは、民ちゃんって本来プロデューサーで女房役だったんだけど、民ちゃんにとってはオレが女房役になったからだと思うんだよね。つまり、彼にとってのプロデューサー。それが民ちゃんの新しい部分を引き出すことにつながったからだと思う。

講師デビュー!のきっかけはファシリテーション講座

で、2003年にBe-Nature Schoolでもファシリテーション講座を始めるときに、「オレも講師やります」って自分で言ったの。ファシリテーションの現場をもうさんざん見てたからね、「そろそろやってもいいかなぁ~」って。それまで進行役ずっとやってたけど、初めてだよね、講師とかファシリテーターって。

ファシリテーション講座1期では、ほとんどサブ講師だったけど、2期くらいからメインとサブを割が半々くらいになって、4期くらいになるとオレがほとんどメイン講師で、民ちゃんは時々出てくる形になった。

ファシリテーション講座は大きな転機だったね。自分の役割がひとつ増えたかな。そういう仕事を外でもするようになったし。講師の依頼を請けながら、「あぁ研修講師ってこういうふうにやればいいんだ」っていうのを実地で学んでいったね。

やっていくうちに、「ファシリテーションができる研修講師」って意外といないこともわかってきた。「ファシリテーション講座の講師」じゃなく。「ファシリタティブにかかわる」ってふつうの世の中では意外と難しいんだってことを、やりながら知っていったね。

大切なことはフィールドに教わった

わりと向いてたんじゃないのかな、ファシリテーション講座の講師。人が何を考えてるのか、表情を見てるとわかるし。感覚を開いてるとね。

どうやってそういう能力が身につくかって? それはね、観察だよ。たぶんプログラムを死ぬほどやってきたからだと思う。特にフィールドプログラムをね。やっぱ野外って、室内より予定通りにいかないことが確実に多い。風も吹くし、一人ひとり歩く速度も違う。そういう変性要素の多い中で、ある程度のまとまり感とか、学びの要素のあるプログラムを動かすって、部屋の中だけで研修講師やってる人には難しいみたい。圧倒的に鍛えられ方が違うんだろうなって気づいたね。

オレなんか逆に、最初は室内が怖かったんだよね。野外に行けばそれだけで幸せっていうか、刺激があるからさ。自然が先生だからね。「室内のほうがプログラム練らなきゃ厳しいなぁ~」って思ってた時期もある。野外と室内、実はそれぞれに厳しさはあるけどね。そういう意味で、とくにBe-Nature Schoolの初期は、野外と室内の両方がある年間プログラムで、同じメンバーと1年じっくり付き合えたっていうのは、大事だったと思うね。

*次回はいよいよ最終回。第4回は、20周年にかけた思いとBe-Nature Schoolの将来について語ってもらいます。乞うご期待!

(聞き書き・鈴木慈子、構成/編集・小島和子)