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【危機管理広報関連】3.23LINE㈱「報道関係者説明会」の検証


昨日(3/23)の19:30~21:15頃まで行われたLINE㈱の「報道関係者説明会」をインターネット中継で見ました。メモを取りながら。

私も限られた知人との「トーク」と「電話」だけの使用ですが、一応LINEユーザーの一人ですので、危機管理広報(クライシス・コミュニケーション)の専門家とユーザーの二つの視点で関心を持って中継画面をパソコンで見ていました。

「報道関係者説明会」については新聞、テレビ等の各メディアやインターネット、SNSなどでも広く報道されると思いますが、私なりに今回の説明会=記者会見を簡潔に検証してみます。説明会は下記動画参照


①説明会の運営について

「評価点」
☆現在のコロナ対策について
・密にならない会場の広さ
・質疑応答の際に左右前方のマイク席に出向いて質問する
・司会者からの「コロナ対策関連」の注意点(マイクに触れないようになど)
等が取られていてその点は適切だった。

☆記者会見場の記者以外に、オンライン(事前に質問を受け付けたよう)での記者からの質問も多数あった。音声等も聴き取りやすく、その点の準備と確認はきちんとされていた。

「課題点」
■会見前のインターネット中継の際にマイクテストの様子が映っていた。
(上記動画とは別の動画)
会場に記者も着席していた。この種のテストはもう少し早くにやっておいた方がいいのでは。

■最大のミスは、19:30から始まるとネット記事にもアナウンスされていたスタート時間が5分ほど遅れたこと。これは特に「緊急記者会見」「謝罪会見」では絶対に避けるべきである。アナウンスされた時間の1分前には登壇者は着席し、時間通りにスタートするのが当然だ。司会者も「5分ほど遅れて申し訳ありません」と言うべき。


②会見での説明、質疑応答について

「評価点」
☆主に発言していた出澤社長は、ゆっくりと落ち着いて話していた。
声もマイクをきちんと使って聴き取りやすかった。

☆説明に使用したスライドもわかりやすい構成、内容になっていた。

☆不適切な態度(感情的な態度など)、不適切な発言等は無かったように思われる。

☆記者からの質問に対しても誠実に回答していた。

「課題点」
■全体的に、説明、回答内容が「具体性に欠ける」印象が強かった。

■説明、回答とも主なメッセージとしては
 ・中国の子会社からのデータアクセスの遮断
 ・韓国データセンターにあるデータを全面的に国内データセンターへ今後移管
の2点であったように思われる。
しかしこれは今後の話であり、これまでの危機管理対策、セキュリティ対策がどうだったかについては曖昧な説明、回答に終始したという印象。
例えば冒頭の説明スライドの1枚「LINE payのデータ管理」には
「LINE payについては、ユーザーの皆さまのプライバシー性の高い本人確認情報は日本国内のデータセンター、取引情報や一部の利用者情報は、現状韓国のデータセンターにて適切なセキュリティ体制のもとで管理が行われています。」
21年9月までに、日本国内のデータセンター移転予定
と記述されている。
私が会場にいる記者であれば、より具体的な説明を求める点で以下3つの質問をする。
(1)適切なセキュリティ体制とはどんなことか。具体的に
(2)現状韓国のデータセンターでも適切なセキュリティ体制であるなら、日本国内のデータセンターに移す必要はないのでは。移すのはユーザーのイメージ(サーバーが外国にある)的な不安に対する配慮ととらえてよいのか
(3)21年9月までに移転予定とあるが、半年後まで時間がかかる理由は

これらは「説明が具体的でない」からこそ出る疑問点である。

■ある記者の「何が問題だったのか」という質問に対しての回答は、
「ユーザーへのわかりやすさの配慮が足りなかった」だった。
曖昧で抽象的な回答内容であり、これも具体性に欠ける。

■ある記者からの「中国の国家情報法に対するリスクの認識があったのか」に対して「もちろん国家情報法のことは知っていたが、リスク情報収集の不足、潮目の変化を見落としていた」という趣旨の回答だった。
これは言い換えれば、平常時の「危機管理」「情報セキュリティ」の情報収集や具体的な対策が不十分であったことにつきる。国内ユーザーの個人情報が、中国の法律によって強制的に収集されるリスクがあることは素人でもわかることだ。国内で8000万人を超えるユーザー数を持つ企業の社会的な責任である平常時の危機管理(=リスクマネジメント)に関して杜撰としか言いようがない。

■YouTubeの33:00あたりの舛田取締役CSMOの回答。
記者からのラインドクター関連の質問に対して、画像データを韓国のデータセンターから国内のデータセンターへ移管するのを「2021年2月に予定しています」と回答していたが、これは2021年の3月の現在明らかに言い間違いだろう。登壇者が緊張もあって言い間違いすることはあるが、これは司会や広報担当がメモを入れてその場で訂正するのが常識だ。私の見た限りそのような訂正は無かったように思われる。

これ以外にも細かく挙げれば多々ありますが、今回はこの辺りで。


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