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Sam Fender「Will We Talk?」の和訳とその感想



「憂鬱な月曜日」
スピーカーから騒がしく鳴り響く
ビーカーには蛍光性の液体が光る
ふざけすぎたあの日の夜

彼女は言った
「普段はこんなことしないの
私の印象変わったかな?」
考えることは男には難しい

そして彼女は言った
「もしも 私と踊ってくれるのなら
もしも 私を家まで送ってくれるのなら
朝になって 私たちは会話してると思う?」

二人は去る
夜の喧騒から抜け出して
膠着状態を避けようと
タクシーを呼んでアパートに帰る

恋愛ではないんだって
ソファーへ横たわった
男はこれっぽちも向かい合えない
大昔からある儀式に

そして彼女は言った
「もしも 私と踊ってくれるのなら
もしも 私を家まで送ってくれるのなら
朝になって 私たちは会話してると思う?」

そして時々 僕は目をつぶる
そして時々 合図が見えるんだ

彼女は言った
「もしも 私と踊ってくれるのなら
もしも 私を家まで送ってくれるのなら
朝になって 私たちは会話してると思う?」



政治的な歌詞を書くことで有名であるSam Fenderであるが、この曲はどうやらone night stands、つまり男女の一夜限りの関係を歌ったようです。
これは本人もインタビューで話しており、「これには怒りの意味はないよ、マジで一夜限りの事についての歌なんだ」と言っている。

リンク先の動画にてインタビュアーが、この歌詞のようなこと今までどんくらいあったの?と聞いてて、「そんなの一回もないよ、冗談言わないでよ」と否定しているものの、18歳の時のクラブでの幾度の失恋を語っているので全くのフィクションというわけでもない。

このリンク先で彼は"heartbreak"という言葉を上記の否定した時に使ったが、確かにこの曲の歌詞はどこかしょっぱい。

この歌の面白いところは詩的なところがあり、小説を読んでるかのような印象を受けるところ。
というのも、この歌は後半まで三人称で語られているのである。She saidとかhis beakerとか出てくるが、私を意味する「I」は後半まで出てこないし、ほんの2回しか出てこない。

解釈というと何かおこがましい気持ちになるし、妄想を膨らませてるのが正解だと思うので、タイトルは感想にしてます笑

1番、まず最初に出てくるBlue MondayはNew Orderの楽曲のことを指してるらしい。私、New Orderは全然知らなくてBlue Mondayの歌詞を読んだのだけど、めちゃくちゃ暗いじゃん。確かに曲のリズム的に踊れるんだろうけど。Sam Fenderのこの曲でわざわざ使われた理由としては、Blue Mondayが何かの比喩ではなく、恐らく本人の思い出から出たんじゃないかなと思う。

そしていまいちよく分からないのは、「Fluorescent liquid in his beaker」ってとこで、ビーカーの中に蛍光性の液体って意味なんだけど、これは英国の若者の遊びとかお洒落なインテリアかなにかの一つなんだろうか。置物に使ったのか、もしくは飲み物でこういう若者文化があるのかは分からない。でもあんまこの歌では重要ではないと思う。

次に女性が「普段はこんなことしない」と言ったのはまさに一夜限りの歌だから出てきたフレーズだなと思うところで、普段はもう少し大人しいけど、この時は大人しい状態じゃなかったんだなと思う。
その次の「Thinkin' is not his forte」ってのは調べて知ったけど、「~ing is not one's forte」で「~することは〇〇の得意な事じゃない」って意味らしい。この歌では直訳して「考えることは彼の強みではない」って意味なんだけど、ここも面白いところで、あくまでも小説に出てくる登場人物のように描写するんですよね。後の文章でこれは自分のことを指してるのは分かるけど、これはインタビューでも語ってる「自分はこんな経験はないよ」っていう語りからこの曲での3人称語りに繋がってるんだろうか。

そしてサビでは、もし君が色々してたら、朝になったら私たちは話してるのかな?ってのは、詩的で面白い表現だなと思う。一夜限りの情事というテーマでこの歌の登場人物に若さというものを感じるんだけど、男も女も感情的な気分になっているな~と感じる。

2番、これ途中まで動詞が現在形で表示されてて、LeaveとかDodgeとか、catchとか。そして次にSprawledって過去形が出てくる。そして主語が全く存在しなくて、最初のtheyしか出てこない。これが何を指し示すか考えたんだけど、「二人がさよならしてアパートに帰るまで」、ここではあくまでも他人事のように語っていて、あくまでも主観的でなく、淡々とした言葉により描写を描いているから心理的描写が「直接的に無い」から状況を理解しやすい。この歌に歌詞を詰め込みにくした構成である以上、シンプルな言葉でもある程度描写が思い浮かぶようにしてるんだなって思う。

歌詞に出てくるMexican standoffってのはアルク先生によると、

互いに武器を向け合ったまま誰も動けない状態、三すくみ、にらみ合いのこう着状態◆複数(特に3以上)の当事者が相互に武器を向け合い、それぞれが「自分が攻撃を開始すれば、自分も攻撃されて助からない。かといって、武器を引っ込めればすかさず攻撃される」と考えるため、誰も身動きが取れない状態。https://eow.alc.co.jp/search?q=Mexican+standoff&ref=wl

であるそうだ。夜の酔っぱらいの喧嘩か何かを比喩してるんだと思う。そしてこの2番、夜の賑やかな街中、喧嘩、タクシーを呼ぶまでのシーンの描写のスピードはとても早い。これが何を示すかっていうと、男が早く家に帰りたいってことだと思う。そう考えるとその後に出てくる「男はこれっぽちも向き合えない」って歌詞に説得力が出て、淡々とした描写であるが同時に男の弱さも実は浮き上がっているように思える。

次、Sprawledというsprawlの過去形「寝そべる」と表したのはその次の「and sometimes, I close my eyes」の描写を補足するためなのかなと思う。
ここでの目をつぶるっての「考えている」時を表していて、「どういう状態で『私』が目をつぶっている」という状況を考える際に、「このソファーに横たわった状態」っていう前提があると、リスナーに、「家に帰ってソファーに横たわって目をつぶるのは考え事かな、一夜限りの関係でそのまま家に帰ってしまったことに思う事でもあるのかな」って想像させるような気がする。みんなそのようなことを考えるだろうっていう根拠はないけど、少なくとも自分はそう考えてしまう。

ブリッジ部分にてようやく「私」という単語を使うんですけど、この歌は果たして「3人称の言葉を使ってきたけど、実は僕の体験の歌でした~」なのか「突如出てくる『私』による突然のセリフ部分」なのかはわからないんですけど、自分は前者だと思いたいですね。なんかこっちの方がロマンがあると思うんで。

このブリッジ部分の歌詞はどうやら2パターンあって、geniusとかの歌詞サイトだと「sometimes I see "You're fine"」派と一方Youtubeのこの歌のMVには「Sometimes I see "a sign"」と分かれているんですけど、僕はどちらかというとエスの発音が強く聴こえるんで後者の方で和訳しました。前者だと翻訳しやすすぎてちょっとつまらないなとも思いますし。

じゃあこのSign、合図は何を指し示すんだろうって考えた時に、出てきたのがサビで散々繰り返す、「もしも 私と踊ってくれるのなら もしも 私を家まで送ってくれるのなら 朝になって 私たちは会話してると思う?」が記号化された事なんだと思う。
主人公にとって女性側からの提案、一夜限りの関係以上を求めた時に発せられたこのセリフが頭から離れられないんじゃないかって考えると、このセリフはもはや頭に入ってくる固形となり、「俺はあの時これ以上踏めなかった」という後悔の念となり、
「あの時彼女はこういって誘ってくれたな」って頭にこびりついたのが"a sign"の正体って考えると、自分も似たような事をしでかしたことあるので、なんか勝手に彼の気持ちが汲めるような気がするんですよね笑

そう考えると「Will We Talk?」ってタイトルにした理由が何となく見えてくるっていうか、まとめると和訳してみたら男性のしょっぱい後悔を綴った曲だなと思えますね。

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#SamFender #WillWeTalk





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