コアラ
コアラに生まれたのには訳があるんです。
ゆっくり話し始めたコアラの目がウルウルしているのを見逃しはしませんでした。
カンガルーに生まれるつもりだったんです。
ところが生まれてみたら、コアラでした。
涙がこぼれないように、目をシバシバしばたいて言いました。
コアラってユーカリしか食べることを許されていないんです。他に美味しいものは沢山あるのに、ユーカリしか食べちゃいけない掟があります。
もっともっとずーっと昔昔。
コアラは地上で他の動物たちと暮らしていました。
コアラってクリクリしたチャーミングな目元と愛嬌のある鼻で、結構人気者でした。
でもどうしてもやめられない癖があったんです。
それは、ちょっとした嘘ついてしまうこと。
コアラ的には悪気は全然なくて、「こっちの方が喜びそう」「こっちの話の方が面白そう」「こっちだったら絶対にウケる」そんないたずら心が常にあって、どうしても嘘をついてしまうのです。
それも、その場だけ面白ければよいので、後のことは全然考えていないんです。
「アレっ!オオカミの子が一匹いないよ。」リスの子が言いました。
「さっき子ザルと一緒に向こうのサル山に行くのを見かけたよ。今頃サルに交じって楽しく遊んでると思うよ。」と見てもいないのに、コアラは言いました。
オオカミのお父さんはサルが大嫌い。
怒ったら面白いだろうなぁとちょっと思っただけでした。
さぁ、お父さんオオカミは、コアラの話を聞くや否や、サル山に突進していきました。サル山のサルたちを蹴散らして子どもを探しました。
「オレの子どもをどこに隠した??」
とんだトバッチリを受けたサルたちは、お父さんオオカミと戦う覚悟を決めました。
いくらお父さんオオカミが強くても、何十匹ものサルが一斉に襲い掛かったらどうなるかまるで見当もつきません。
「いたわよ!!」お母さんオオカミが走りながら、叫びながら、「いたわよ!お父さん!!小川のほとりでアライグマと遊んでいたわ!」
怒りの収まらないお父さんオオカミ、濡れ衣を着せられたサルたち、
「こんな嘘をついたのは、またコアラか??!!」
いつもこんな感じなのです。
一部始終を見ていたコアラは、ぴゅーっと木の上に登って事態が収まるのを待っていました。
「たまごが一個ないわ、ないわ!!」むくどりが鳴きながら探していました。
「さっき、ニシキヘビが飲み込んでたよ。首の下がぷっくり膨らんでいたもの。」
コアラがまたまたニシキヘビの首の下の膨らみを想像してニヤニヤしながら言いました。
「あんた!ちょっと!ニシキヘビ!私のたまご食べちゃったでしょう!」
ちょうど食事が終わったニシキヘビは、
「今日はアンタのたまごはいただいていませんよ!」
頭の上を飛び回られてイライラしながらニシキヘビは言いました。
「でもでも、首の下がぷっくり膨らんでるじゃないの!」
「今日は野ネズミちゃん!」
むくどりのお姉さんが、飛びながら、叫びながら、「あったわよ!あったわよ!巣の下の枝にあったわよ!」
怒りの収まらないムクドリ、濡れ衣を着せられたニシキヘビ、
「こんな嘘をついたのは、またコアラか???!!!」
いつもこんな感じです。
一部始終を見ていたコアラは、ぴゅーっと木の上に登って事態が収まるのを待っていました。
チョットした嘘のつもりが森の中の動物同士の関係をギクシャクさせているのは大問題です。
動物会議がコアラ抜きで始まりました。
「コアラの嘘は他の動物を著しく傷つける!」
「コアラの嘘は笑って許せるレベルではない!」
「コアラはまったく反省していない!」
「コアラをおとなしくさせる方法はないか?」
「判決を言い渡します!」
1つ、コアラは木の上で生活をすること。
1つ、嘘をついて他の動物に迷惑をかけないように、毒性の強いユーカリを食べて、解毒のために16時間以上の睡眠をとること。
他の動物でも、別の動物に迷惑をかけたり、嘘をついたりすると、
次に生まれるときに希望通りの動物に生まれることが出来ないのには、
こんな理由があるのです。
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